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プレスリリース 発行No.716 平成28年9月27日

高齢者がかかりやすい「皮膚病」とは
~乾燥やかゆみを予防するには「保湿成分を与える」ことが大事~

 東邦大学医療センター大橋病院 皮膚科(東京都目黒区大橋2-17-6、診療部長:福田英嗣)では、皮膚科全般の診療を行っています。中でもとくに「アトピー性皮膚炎」「乾癬」「皮膚腫瘍」「円形脱毛症」「薬疹」といった疾患の診断や治療に力を入れ、臨床を通じ知見の蓄積に努めています。

 人は加齢とともに皮膚の水分や皮脂が減少し、皮膚を保護するバリア機能も低下するため、高齢者では「カサつき」「かゆみ」「湿疹」などの皮膚トラブルが起きやすくなります。これは、皮膚が乾いてくることで、普段は感じない外部からの刺激に対して敏感になりやすくなることが原因です。それに伴い、ひっかき傷などの二次的なトラブルのリスクも高くなります。

 また、「皮膚は内臓の鏡」という言い伝えがあるように、内臓の調子が悪くなると、皮膚にも変化が起きやすくなります。当レポートでは、加齢によって起こりやすくなる皮膚病の正しい知識や予防法についてお伝えします。

1. 高齢者がかかりやすい皮膚病

「皮脂欠乏性皮膚炎」は、老化に伴う皮脂の分泌量の低下によって皮膚の乾燥が生じるのが原因です。特に冬場は皮脂分泌が少なくなりやすいため発症しやすくなります。症状はひざから下に現れやすく、皮膚の表面がカサカサになったり、亀甲模様の亀裂がみられたりします。強いかゆみを伴う場合があるため、ひっかくことでさらに症状が悪化することもあります。

「基底細胞癌」は、皮膚癌の中で一番多いとされますが、悪性度は比較的低いとされます。長期間紫外線などにさらされることで発症しやすくなります。高齢者の顔面にみられることが多く、中央部が潰瘍化し、その周囲を縁取るように黒灰色の結節が現れるのが特徴です。

「脂漏性角化症」は、「イボ」の一種です。顔面、頭部、体幹等にみられ、特に紫外線にあたりやすい顔にシミと一緒にできることが多い症状です。はじめは小さくても、放っておくと少しずつ大きくなります。

「日光角化症」は、放置すると数年~数十年の経過で皮膚癌に変化することがある皮膚病です。
病名にあるように、日光(紫外線)が主な原因です。顔面などにみられることが多く、赤い斑点に特徴があります。

「帯状疱疹(ほうしん)」は、子供の頃にかかりやすい水ぼうそうを起こす原因である水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こる感染症です。 神経の付け根に残っているウイルスが再活性化し、その神経支配領域に一致した部位に、赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状に現れます。高齢者の場合斑点や水ぶくれの症状が治まっても、痛みが残ってしまうことがあります。

「単純性疱疹」は、ヘルペスウイルスが原因で発症する感染症の一つです。ウイルスが何らかの接触によって体内に潜入し、紫外線にあたったり、身体の抵抗力が下がったりしたときに発症します。口の周囲や陰部などに起こります。赤い斑点と小さな水ぶくれが現れ、やがて破れてかさぶたとなります。

「疥癬(かいせん)」は、ヒゼンダニ(体長:メス0.4ミリ程度、オス0.25ミリ程度)が皮膚に寄生して起こる感染症です。老人ホームなどで集団感染しやすい傾向にあります。非常に多数のダニの寄生が認められる角化型疥癬と、少数寄生であるが激しい痒みを伴う普通の疥癬とがあります。

「白癬(はくせん)」は、白癬菌が皮膚に感染して起こる感染症です。症状が現れる部位により分類されます。足白癬はいわゆる水虫のことです。他の皮膚病と区別するため、顕微鏡で白癬菌が存在するかどうかを検査します。
足白癬は3種類に分けられます。土踏まずや足の側面などに出やすい汗疱(かんぽう)状型、足の指の間に多い趾間(しかん)型、かかとから足の側面が硬くなる角化型です。
高齢者では、足白癬を放置すると、爪白癬を合併することがあります。爪白癬の治療には内服治療が効果的ですが、高齢者は他にも薬を飲んでいることが多いため飲み合わせの問題や、副作用として肝機能障害を生じやすいので注意が必要です。

 上記のように、高齢者がかかりやすい皮膚病には様々なものがあり、同じ皮膚病でも症状は患者さん一人ひとりで治療法が異なります。気になる症状が現れたら、すぐに病院で診てもらうことを心がけましょう。

2. 予防には保湿が大事

高齢者に起こりやすい乾燥やかゆみを予防するには、「保湿成分を与える」ことが大事です。皮膚の機能を維持し、その老化を避けるには日々のスキンケアが重要です。

腕への塗り方の例は以下の通りです。
1.手をよく洗って清潔にし、保湿剤を手に取ります。
2.保湿剤を腕に数カ所置きます。
3.手のひらで優しく丁寧に、擦り込まないようにして乗せるように塗り広げます。
体のしわに沿って塗ると、ムラなく塗布できます。
4.塗布部位が光って見える、ティッシュペーパーが付く程度が塗布量の目安です。
 このほか、お風呂に入ったときの注意点として、皮膚の最も外側にあたる角質層は無理にはがさない、つまり、「ゴシゴシ洗わない」ことや、設定温度が高いお風呂に入浴すると皮膚のトラブルにつながる場合があるので、「控えめな温度にする」こともこころがけましょう。

以上

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