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プレスリリース 発行No.706 平成28年8月22日

発汗の多い季節に増加しやすい「金属アレルギー」
~ アレルギーの正体を突き止めることが回避の第一歩 ~

 東邦大学医療センター大森病院 スキンヘルスセンター(東京都大田区大森西6-11-1、臨床教授:関東裕美)では、病的皮膚、健康皮膚に関わらず抗老化も目指し、臨床を通じ知見の蓄積に努めています。

金属アレルギーが原因とされる皮膚のトラブルは、発汗の多い夏に増加しやすいといわれます。金属は、身につけるアクセサリーや触れる機会の多い硬貨だけでなく、調理器具から医療器具まであらゆるところで使用されており、私たちの生活に欠かすことのできないものです。 当レポートでは、金属アレルギーの正しい知識や対策法についてお伝えします。


人間の皮膚は、金属に触れただけでアレルギー反応を起こすことはほとんどありません。金属アレルギーは、汗や唾液などによって、金属から溶出した「金属イオン」が皮膚のたんぱく質と結合すると、それを体が「異物」とみなし、拒絶反応を起こすことによって起こります。

汗をかきやすい夏は、皮膚表面で金属がイオン化しやすくなるため、金属アレルギーを発症する人が多くなります。こうした汗による「接触皮膚炎(かぶれ)」のほかに、歯科治療で用いられる金属や種々の金属元素を含む食物の影響などで、生体内の金属イオンバランスが崩れて起こる「全身型金属アレルギー」もあります。こちらは金属製品が直接触れていなくても皮膚炎が起こるため、内因性アトピー性皮膚炎とも理解されるようになってきています。

1. 体に必要な金属でもアレルギーを引き起こす

人間が摂取することで得る、生命維持に欠かせない元素を必須元素といいます。この中には、多くの金属元素が含まれます。ほんのわずかだけ必要な微量元素でも、体内代謝などのバランスがくずれることで、それぞれの元素特有の症状が現れることがあります。

金属アレルギーを起こしやすい金属は、ニッケル、コバルト、クロムなどですが、これらの金属も人間の生命維持に必要な微量元素です。
例えばニッケルは、加工しやすくてさびにくく、しかも安価なので、様々な身の回り品に使われており、ピアスやネックレスといったアクセサリー、時計バンドやメガネのフレーム等に含まれています。こうしたニッケルなどの金属が、肌に長時間接触している状態にあることで、金属アレルギーを起こしやすくなります。
中でもピアスは、金属が直接皮下組織と接触するため、特に注意が必要です。

2. 金属アレルギーの検査方法

金属アレルギーを起こす原因物質を検査する方法として、パッチテストが一般的です。
これは、アレルゲンと考えられるいくつかの金属試薬を含んだ絆創膏を上背部、もしくは上腕外側へ2日間貼ります。その後これを取り除き、皮膚の変化を調べます。アレルギーの原因を特定するために、貼った日から48時間後、72時間後、1週間後、10日後にそれぞれ判定を行います。

このほか、患者さんの血液から取り出したリンパ球に、アレルゲンである口腔内金属を取り込ませることによって調べるリンパ球刺激試験や口腔内の電流を測定して金属溶出の傾向を調べる方法もあります。

3. 夏場の金属アレルギー対策

① 気になる人は病院でアレルギーテストを受ける

アレルゲンの正体をつきとめ、原因となっている金属を身の回りから遠ざけることが、金属アレルギーを防ぐ第一歩です。それには、病院でパッチテストなどの検査を受け、自身のアレルギーの原因となる金属が何かを知ることが必要です。

原因となる金属が特定されたら、「身に着けない」ことで接触によるアレルギーを回避できます。また、「食事に気を付ける」ことで全身型アレルギーの回避ができます。たとえ、金属アレルギーがないと判明しても金属を多く含む食品を理解して過剰摂取は避け偏った食事をしないようにします。また、よい睡眠を心がけ自己免疫機能維持に努めるといった心がけも大事です。

歯科金属が挿入されている場合、金属融解を促進する可能性のある炭酸や酢、柑橘類は摂り過ぎないように注意して、金属歯周囲の歯肉や頬粘膜の炎症があるかどうかを観察し、口内炎や口腔内の症状、味覚異常がないかどうかについても注意するようにします。

② 汗をかいたときはこまめにふき取り、接触部の細菌感染を防ぐ

発汗の多い夏に症状の出やすい金属アレルギーですが、これは汗の中の塩素イオンが金属を溶かす作用が強く、金属イオンとなって汗と混じり合うことで引き起こされます。したがって、汗をかいたときはこまめにふき取るようにしましょう。また、掻き傷などに繁殖する細菌感染がアレルギー反応を進行させるので、皮膚のバリア機能を損ねないように洗浄することも大切なポイントです。

私たちが行った高齢者術前患者群の金属アレルゲンパッチテストによると、皮膚症状のない高齢者の約15%がニッケルに陽性反応を示しました。 つまり、経皮、経口両者の経路から金属に接触する期間が長いことで、気がつかないうちに金属アレルギーが成立していることが推察されます。

このように、誰にでも金属アレルギーを発症する機会があるといっても過言ではなく、自身のアレルギー状況を見極めることができれば、それだけ発症リスクを下げることができるのです。
以 上

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