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プレスリリース 発行No.606 平成27年6月24日

東邦大学メディカルレポート
 
 熱中症から身を守る~
~ 熱中症の原因・症状を知り、予防する ~

東邦大学医療センター大橋病院 救急集中治療科(東京都目黒区大橋2-17-6、診療部長:櫻井 貴敏)では、毎年夏場に頻発する熱中症のメカニズムとその予防に関する知見の蓄積に努めています。
梅雨明けとともに訪れる猛暑の中で熱中症にかかることのないよう、今のうちにその原因と症状を正しく理解し、予防に努めたいものです。
そこで、熱中症に関するこれらの情報を、医療機関の立場から”わかりやすく“、また専門医師のアドバイスも交えてお知らせします。

● 熱中症とは

高温や多湿な環境下で、脱水と熱によって起こるすべての障害を「熱中症」といいます。
一般的に、細胞は高い熱によって障害を受けます。その結果、細胞が働かなくなり、細胞から成り立っている臓器も機能しなくなります。これが熱による臓器不全です。

熱中症は日常生活の中で起きる「非労作性熱中症」(古典的熱中症)と、
スポーツや仕事などの活動中に起きる「労作性熱中症」に分かれます。


非労作性熱中症は、夏の猛暑にエアコンをつけず、水分をあまりとらない高齢者に多く起こります。高齢者は加齢とともに発汗しにくくなり、また症状に乏しく水分摂取が少ないため、身体の水分が減少して皮膚血流量が低下します。その結果、皮膚から熱が逃げにくく、熱を下げる作用が弱くなります。加えて風のない室内では熱放散がさらに低下し、そのことによっても体温が上昇することとなります。
一方、労作性熱中症は、健康な人でも高温環境での強度の労作によって、大量発汗による著明な脱水、熱産生増加と汗の蒸発減少に伴って体温が上昇することによって起こります。
職場における熱中症による死傷災害の発生状況は以下の通りで、毎年400~500 人の死傷者が出ており、建設業が最も多く、次いで製造業で多く発生しています。
(資料 厚生労働省)

● 熱中症にかかりやすい人とその症状は以下です。

  (1)脱水を起こしやすい。
  (2)自律神経機能が低下しやすい。
  (3)暑さに順応しにくい。
特に、子供や高齢者、肥満や運動不足、慢性疾患患者(特に精神神経・腎・糖尿病・皮膚疾患)が熱中症弱者といわれています。

主な症状は、以下のようなものです。
  (1)汗をかいているうちにめまいがしてきたり、ふらついたりする。
  (2)筋肉痛、頭痛等が起こる。
更に進むとボーっとしてきます。そして、重症になると意識を失います。
これは非常に危険です。

● 熱中症の予防は

原因は明らかですので、十分に注意すれば基本的には予防することが可能です。
また、なったとしても、有効な治療を行えば重症でも入院は2日間が最多、死亡も最初の2日間で2/3という報告があります。つまり、死に至る高体温や臓器障害は早期に対応すれば早く回復できるということですから、やはり熱中症はその予防と重症化させないことが重要です。予防は、暑さを避けることと水分(塩分)補給が基本です。

(1)暑さを避ける
基本的に暑いところにいなければ熱中症になることはありません。このことは熱中症弱者には特に重要です。また、高齢者は冷房を嫌がることが多いので扇風機を併用して、室温28℃、湿度70%以下を目標にします。 熱中症の多くは7月下旬までに多くが発生していますので、体が本格的な暑さに慣れていない時期には特に注意する必要があります。

(2)水分補給
汗をかいたり喉が乾いたら必ず水を飲むようにしましょう。入浴や睡眠時も汗をかきますので、その前後には飲むのが良いでしょう。
ただし、水分制限をしている人は注意してください。尿がいつも通り出ていれば問題ありません。あまり尿が出ない時、あるいは出ても濃い場合には補給するようにしましょう。

3)塩分補給
発汗は水分とともに塩分も失いますので、大量の汗をかいたり、高温多湿の環境にいるときは塩分補給にも注意することが必要です。
通常通り食事をする場合にはさほど神経質になる必要はありませんが、冷水(5~15℃)と梅干しや、スポーツドリンク、経口補水液も有効です。糖分があると小腸での水と塩分が吸収されやすくなるとも言われていますが、市販のスポーツドリンクは糖分が多く、大量摂取は糖分の取りすぎに注意しましょう。高齢者や心臓病、高血圧、腎臓病、糖尿病等で塩分や糖分制限がある場合には担当医に相談してください。


日本救急医学会の熱中症の応急処置を掲載します。

なお、症状がひどい場合は迷わずに救急車を呼びましょう。
専門医による早急な治療が重症化を防ぐために重要です。


参考文献
1)『太田祥一の救命救急入門』 第7 回 熱中症に負けない:『DtoD コンシェルジュ』
https://www.dtod.ne.jp/critical_care/article7.php

2)日本救急医学会 HeatstrokeTUDY2012 最終報告日救急医会誌 2014; 25: 846-62

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