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プレスリリース 発行No.568 平成26年12月19日

転倒による骨折の怖さ
~ 冬場の凍った道での転倒を防ぐために気をつけたいこと ~

 東邦大学医療センター佐倉病院 整形外科(千葉県佐倉市下志津564-1、診療部長:中川 晃一教授)では、特に冬場に増える転倒による骨折の防止策、また骨折した場合の適切な措置やリハビリテーションの実施に関する知見の蓄積に努めています。
 突然の大雪やそれに伴う路面の凍結などにより、転倒して手や足を骨折し来院する人が毎年増えています。年末から正月、及び年明けの時期は、厳冬期にもかかわらず外出機会も多く、また荷物を持っての移動も多いことから、歩行時にバランスを崩すリスクも増加し、降雪や路面凍結と相まって転倒の危険性が飛躍的に高まります。
特に、高齢者にとっては、骨折は運動の機会を奪われることにつながるため、筋力の低下や運動能力の減退を招く恐れが高く、ひいては認知症のリスクも高まることから、できる限り避けなければいけないことです。
 怖い骨折を防ぐために気をつけたいこと、また転倒してしまった際に留意するべきことなどを医療機関の立場からまとめてお知らせします。

●転倒によって骨折しやすい部位
 人の体の中でも、特に脊椎(背骨、特に腰椎)、大腿骨近位(頚部、転子部)、橈骨遠位(手首)、及び上腕骨近位の骨は、骨粗鬆症が進むことで骨密度の低下が顕著に出やすい海綿骨を多く含む部分であるため、転倒によって骨折を起こしやすい部位といえます。
腰椎、大腿骨近位部は転倒してしりもちをついた際にその衝撃を直接受けやすく、また、橈骨遠位、上腕骨近位は、やはり転倒して手をついた際にその衝撃を直接受けやすい部位であるため、骨折を起こしやすくなります。
 
●転倒による骨折の怖さ
 冬場の路面凍結時などの転倒は、大きくバランスを失いもんどりうって倒れることが多いことから、腰や背中から路面に落ちることとなり、その結果、大腿骨近位部や腰椎、また背骨など体の重要な部分を骨折することにつながりやすいのが特徴です。
治療は一定期間安静を保つことによって骨折した骨が固まるのを待つ保存治療が原則ですが、骨折の重症度、部位によっては手術を要する場合があります。
特に背骨の骨折後は体が丸くなる(円背)変形を残すことが多く、体にも生活にも多大な影響を及ぼすこととなります。
 
●転倒を防ぐために気をつけたいこと
①体を動かし、温めてから外に出る
 寒い日は体が強張って固くなりがちです。
 体に柔軟性がない状態で外に出ると、路面の変化に対応できません。
 外に出る前に体を動かし、温めて運動性を高めることが大切です。
 
②底がギザギザで滑らない靴を履く
 底が平らで滑りやすい靴を履くことは禁物です。外出の際は見た目を気にせず、機能を重視して、とにかく滑らない靴を履きましょう。
 
③遠回りになっても、凍った道を歩かない
 雪や霜で凍った道はもちろん、日陰で一日中陽が当たらない道は朝夕の水蒸気が凍り、滑りやすくて危険です。目的地に対して回り道になったとしても、陽が当たって凍結していない道を歩きましょう。
 
④足の真ん中に重心を乗せて、ゆっくりと歩く
 転倒は体のバランスが崩れることによって起こります。
 凍った路面を歩く時は常に体の重心を足の真ん中に乗せて歩くように心がけましょう。手でバランスを取ることも重要です。また、走るのは非常に危険です。時間がかかってもゆっくりと確実に歩きましょう。
 
⑤なるべく手荷物を持たない、できれば両手を空けておく
 荷物を持っていると、手でバランスを取りにくくなります。特に両手に荷物を持った状態では、手をついて体をかばうこともできにくく、非常に危険です。
 荷物はリュックに入れて背負いましょう。
 万が一仰向けに転倒した際にも、リュックがクッションの役目を果たして後頭部や背中、腰を庇ってくれます。

●転倒予防のために日頃から心がけたいこと
①筋力や柔軟性の維持・向上を図る
 転倒の原因は,身体的なものと環境的なものに大別できます。
 身体的な原因としてはバランス機能の低下が考えられますが、バランス機能を維持するためには筋力や柔軟性を維持・向上することが重要です。
 
 筋肉の中ではお尻の筋肉(中殿筋・大殿筋)、太腿の筋肉(大腿四頭筋)、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)など、主に脚の筋肉を日頃から鍛えるようにしましょう。
 また同時に柔軟性を高めることで、歩行などの動作の安定性や効率的な動作が可能となり、転倒の危険性を低下させることにつながります。
 
②日頃から適切な運動を心掛ける
 高齢になるほど筋力や柔軟性を向上させることは難しくなってきますが、日頃から適切な運動を心掛けるようにすることで、筋力や柔軟性の低下を防ぐことができます。
 例えば、椅子に座った状態での足踏みや膝伸ばしでも、ゴムバンドや重錘バンドを用いた運動は筋力トレーニングとして有効です。
 
 柔軟体操としては、入浴後のストレッチ体操や運動前の準備体操も効果的です。
 また日常的に歩行や階段昇降などを行うことは、筋力や柔軟性を維持しバランス機能を低下させないことに繋がります。
 
③なるべく安全な生活環境に整える
 転倒の環境的要因としては、冬季の気候的な要因の他に、照明の明るさの違い、絨毯の沈みこみ、あるいは畳の継目や1~2cm程度の小さな段差で足を引っ掛けるなどが原因として挙られていますが、意外にも階段などの明らかな段差よりも、小さな段差のほうが転倒の危険性が高いと言われています。
 従って、このようなちょっとした身の回りの生活環境を改善することも、転倒の危険性を軽減することに繋がるといえます。
 
●万が一転倒した際の留意点
 転倒して背中や腰の痛みで立ち上がれないような場合は、脊椎(背骨)の圧迫骨折が考えられます。また、股関節(足の付け根)や臀部の痛みで立ち上がれないような場合は、大腿骨近位部の骨折が考えられます。
背中や腰、股関節や臀部の強い痛みで一歩も動けないような場合には、近くの人に助けを求めて救急車を要請してください。
 
 転倒の際、手をついた後に手関節(手首)の腫れや痛みが強い場合には橈骨遠位端骨折、肩~腕の付け根の腫れや痛みが強い場合には上腕骨近位端骨折の可能性があります。
手首や肩付近の痛みの場合には基本的には歩行が可能な状態と思われますので、怪我をしていない反対側の手で支えて慌てずに医療機関を受診するようにしましょう。
屋内での怪我であれば、大き目のタオルを三角布代わりにして腕を吊って安静にしておくのも良い救急処置です。
また、アイスノンなどで患部をクーリングすることも炎症の拡大を抑えて痛みを増幅させないために有用な対処法です。
 
 いずれの場合も診断には医療機関での画像検査(X線、CTなど)が必要であり、その結果によって通院加療でよいか、入院加療が必要か、または固定などの保存治療で大丈夫なのか、それとも手術が必要か、などの治療方針が決まります。
 
以上

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