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プレスリリース 発行No.468 平成25年10月17日

日本陸水学会 第78回大会において
理学研究科 学生 最優秀ポスター賞 受賞
~印旛沼に繁茂する水生植物と昆虫類・クモ類の関係について~

2013年9月10日~13日に龍谷大学瀬田キャンパス(滋賀県大津市)で開催された日本陸水学会 第78回大会において、理学研究科の大学院生 中西奈津美さん(博士前期課程1年) が最優秀ポスター賞を受賞しました。

日本陸水学会は、湖沼、河川、地下水、温泉等内陸部のあらゆる水域に関して、地球物理学、地球化学、生物学、地理学、環境科学などの側面から総合的に研究を行い、その発展、普及、応用をはかることを目的としている学術団体です。
 日本陸水学会ポスター賞は、大会におけるポスター発表の質の向上、ならびに若手研究者会員の学会参加・発表に対する意欲向上を目的として設けらており、ポスター発表審査対象になることを希望した若手研究者(学生会員もしくは最終学歴後 5年以内の会員)の中から、ポスター賞実行委員および審査委員により受賞者が選出されます。
 最優秀ポスター賞を受賞した中西さんの発表は、32件の審査対象ポスターから選出されました。研究の質、またそれを理解しやすく伝えるために制作したポスターおよびプレゼンテーションが総合的に評価された結果です。

受賞者・演題・研究概要

◆中西奈津美 さん
( 大学院環境科学専攻 博士前期課程1年 湖沼生態学研究室〔鏡味麻衣子 准教授〕 )

「水上の昆虫類・クモ類の種組成は沿岸の水生植物によって異なるか?」

 本研究は、印旛沼において陸域と水域の移行帯に生息する昆虫類・クモ類の群集構造を明らかにすることを目的に、共同研究者である高木俊 博士(生命圏環境科学科 博士研究員)と共に行われました。
 一般に湖沼の沿岸には抽水植物や浮葉植物、沈水植物が存在して、その水中部分では魚類や水生昆虫、動物プランクトンなどの水生生物が、水上部分では陸域と水域を移動するトンボ・クモ・鳥といった生物が、生息・採餌場所として利用しています。しかし、近年日本の湖沼では、沿岸部の干拓などにより陸域と水域の移行帯がなくなるまたは狭まる、夏季に浮葉植物であるヒシ属が大量に繁茂する等、湖沼沿岸部の環境に変化がみられます。このような状況の中、水上の動物群集と水生植物の関係を明らかにした研究は少なく、水生植物の種類や繁茂の程度によって、動物の群集構造にどのような違いがあるのかほとんどわかっていませんでした。
 そこで本研究では、夏場に印旛沼で大量に繁茂する浮葉植物(オニビシ・ヒシ)群落と抽水植物(ヒメガマ)群落における水上での昆虫類およびクモ類の動物群集の違いを調べました。その結果、植物種の違いやその被度(水面を被っている密度)、また沿岸部からの距離によって、構成する動物種の組成や個体数密度が異なっていることがわかりました。印旛沼においては、湖沼沿岸部の環境の変化が「陸域と水域の移行帯を好む生物を減少させ、浮葉植物を利用する生物を増加させている」といった影響を与えていることが明らかになりました。

 この成果は、印旛沼のかつての自然構造に近づけるための知見の1つになると思われます。湖沼生態学研究室では、印旛沼を対象フィールドに水質、ツボカビやプランクトンといった微生物、水生植物、昆虫類、鳥類などさまざまな生物の繋がりについての研究を行っており、自然における生物間のちょうど良いバランスを探っています。

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