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プレスリリース 発行No.343 平成24年5月25日

東邦大学習志野キャンパス
日本動物分類学会 第48回大会 開催
~不思議な生物 ユムシについて本学学生が発表~

2012年6月9日(土)・10日(日) 東邦大学習志野キャンパスにおいて 「日本動物分類学会 第48回大会」 が開催されます。東邦大学理学部生物学科の西川輝昭 教授が大会会長を務め、本学学生による発表も行われます。
~不思議な生物 ユムシについて本学学生が発表~

 日本動物分類学会は、地球上に生息するあらゆる動物を対象とした分類学に関わる方々の相互の理解および親睦を深め、動物分類学の振興を図ることを目的にし、大会やシンポジウムの開催、会誌の刊行などの様々な事業を行っています。
 分類学とは、どのような特徴をもった生き物がどこに生息しているかを発見し、それを血縁関係に基づいて整理・体系化する、いわば生物の“戸籍”を作る学問です。それにより、私たちは初めて、進化の具体的な道筋を辿ることができ、生物の絶滅や外来種の侵入といった情報をリアルタイムで正確に把握することができます。環境問題や生物多様性への関心が高まりつつある現在、その根底を支えているのが分類学なのです。
 本大会では、口頭・ポスター発表を合わせて58題の発表が行われます。本学からは大学院理学研究科 生物学専攻博士前期課程2年の田中正敦さんが 『瀬戸内海の干潟に生息する「コウジュ」の分類学的検討』 と題して口頭発表します。田中さんはユムシ類の研究者が世界的に少ない中、混乱しているユムシ類の分類を再構築することを目的に研究を行っています。
 本研究は、瀬戸内海の干潟で昨年採集したユムシ類の同定(名前を決める)作業中、どの既知種にもぴったりあてはまらない標本に出会ったことがきっかけで始まりました。この標本は、広島県沿岸の干潟に棲むユムシの仲間で「コウジュ(好餌の意味)」と呼ばれ、釣り餌として珍重されていたものと似ています。「コウジュ」は先人によって1934年にオウストンミドリユムシと同定されましたが、その根拠は明確でなく、また分類に必要な情報も不十分でした。
(※オウストンミドリユムシという種は、東京湾口の浦賀水道の深海から採取された不完全な1個体に基づいて、今から100年以上前の1904年に新種記載されました。しかし、現在その標本は失われているため、新しい観点からの検討ができません。)
 そこで田中さんは、問題の標本を、博物館に保管されていた過去の「コウジュ」標本と照らし合わせたところ、同じものであることが分かりました。さらに、これらにはすべて、ユムシ類の中で一部のグループのみに見られる「環状血管を欠く」という重要な特徴があることを新たに見つけました。
 オウストンミドリユムシの浦賀水道深海産標本の不完全な記載と「コウジュ」標本とを比べるかぎり、両者の間に大きな違いはありませんが、内生殖口の形状でやや異なる点があります。さらに生息深度が大きく異なることから、「浦賀水道のオウストンミドリユムシ」と「コウジュ」は別種である可能性があります。
 このことを解明するため、田中さんは今後、約110年前にオウストンミドリユムシ標本が取れた浦賀水道において新たな標本の採集を試み、形態的特徴および遺伝情報の双方から検証したいと意気込んでいます。

日本動物分類学会 第48回大会

主催:日本動物分類学会 後援:東邦大学理学部鶴風会(同窓会)

【日時】6月9日(土)13:00~17:45、10日(日) 9:00~16:00
【場所】東邦大学習志野キャンパス 理学部Ⅴ号館(千葉県船橋市三山2-2-1)
※詳しくは第48回大会案内まで

【取材等に関するお問い合わせ先】
東邦大学 経営企画部 広報担当 / 理学部 東京湾生態系研究センター   森上 需
〒274-8510 千葉県船橋市三山2-2-1   E-mail: press@toho-u.ac.jp
TEL/FAX:047-494-8571    M Phone: 090-8722-8471