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プレスリリース 発行No.235 平成23年7月7日

整備された水田のメダカを守る
~水田と水路をつなぐへその緒~

 「圃場整備された木更津市の水田地帯において、メダカが個体群を維持している仕組み」を理学部生命圏環境科学科 泉水弘也さん(2011年3月卒業)が卒業研究で明らかにし、それをまとめた論文が千葉県生物学会 学会誌「千葉生物誌 61巻1号(2011年7月発行)」に掲載されました。これは圃場整備された水田におけるメダカの挙動を明らかにしたもので、整備された水田地帯に生息するメダカの保全策を考える上で重要な知見となります。
~水田と水路をつなぐへその緒~

 メダカは北海道を除く日本全国の平地の池沼、水田、小川などで生息する代表的な魚で、身近に触れ合える生き物でした。しかし現在では、環境省レッドデータブックにおいて絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)、千葉県レッドデータブックでも重要保護生物に指定されるなど全国的にメダカが減少しており、存続が危惧されています。その原因は、都市開発や河川改修による生息地の消滅、農薬や生活排水による環境悪化が挙げられます。特に水田地帯では、稲作の効率化を目的とした圃場整備が全国的に行われ、水路のコンクリート護岸整備や水田と排水路の分離などで、植生や水田と水路の連続性の消失が起こりました。そのため、流れを和らげる構造が少なくなり、メダカが好む流れの緩やかな水路が減少し、また水路と水田の高低差が大きくなったことで、繁殖場所の水田と乾田期の生息場となる水路との移動の阻害が起こりました。
 これらのことから圃場整備された水田地帯では通常、メダカが個体群を維持することは困難であると考えられています。

 圃場整備事業が今後も進むと思われる現状では、整備された水田地帯でのメダカの保全策を考える必要があります。本研究では、圃場整備されているにもかかわらず、メダカの生息地となっている木更津市小櫃川河口周辺の水田地帯において、その個体群を維持しているしくみを明らかにするため、水田での人間の活動とメダカの空間分布、サイズ構成の関係について調査しました。

 その結果、この地域はほとんどの排水路がコンクリート護岸であり、不定期に排水路の水を海へ強制排出していました。排水路では、強制排出時の極端な水位減少によりメダカの分布域が制限されている一方で、排水停止時には水位が増加し、排水路と水田の水位差が解消されるため、メダカの分布域が拡大していることが分かりました。また排水路と水田のサイズ構成から、メダカは繁殖や稚魚の育成場として水田を利用していることが示されました。両空間のメダカの移動を可能にしていたのは非意図的な排水管理であり、それが結果として調査域でのメダカ個体群の維持につながっていました。

 今回の研究では、圃場整備された水田地帯におけるメダカの個体群維持には、水田と水路間の通路を確保することが重要であると結論付けています。この研究成果は圃場整備された水田地帯のメダカを始めとする淡水魚類、地域の生物多様性を保全する上で有用な知見であると考えられます。

〈 論文タイトル 〉木更津市畔戸水田地帯におけるメダカの生息と水田利用
〈 著 者 〉泉水弘也・風呂田利夫
〈 掲 載 誌 〉千葉県生物学会誌61巻1号(2011年7月)

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