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プレスリリース 発行No.196 平成23年2月24日

高校生が遺伝子診断を学ぶきっかけに!
~「メダカ幼魚の簡易・迅速な性別判断方法」の開発~

 「DNA の個体差を学習させる実験において、メダカ幼魚の性別判断を簡易かつ迅速に行う方法を、教育材料として初めて開発した」ことを、本学薬学部薬学総合教育センターが (財)緒方医学化学研究所・医学生物学速報会 「医学と生物学 第155巻 第2号」(2011年2月発行)に報告しました。この研究は、プライバシー保護の観点からヒトのDNAではなくメダカのDNAを用いた実験方法を開発したもので、高校生が遺伝子診断を学ぶきっかけになることが期待されます。
~「メダカ幼魚の簡易・迅速な性別判断方法」の開発~

 DNA の個体差を学習するための実験として、大学の実習では実験者自らの細胞を用いて行うことが一般的です。しかし高校生を対象とした場合、この実験ではDNA という個人情報を扱っていることを十分に理解させた上で行わせることが大切です。また、実験を実施できる環境が整ったとしても、多くの時間を要するDNA の抽出・増幅の作業が、時間的制約のある実習において大きな障壁となっています。
 そこで本研究では、DNA の個体差を学習する実験として、性決定遺伝子が明らかなメダカを材料にして外部形態からは判断できない幼魚のオス・メス鑑定の実験を簡易かつ迅速に行う方法を開発しました。

〔実験方法〕
メダカの成魚のオス、メスおよび幼魚(性別不明)の尾びれを切り取り、生体試料破壊器具(BioMasher; 株式会社ニッピ)の中に入れ、10秒間遠心し抽出液を得ます。その抽出した溶液を鋳型として、酵素にKOD FX DNA polymerase(東洋紡績株式会社)を用いてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行い、性決定遺伝子を増幅させます。そして、このPCR 産物をアガロース電気泳動法により、そのサイズを確認し幼魚の性別を判定します。
 この実験方法では、DNA の抽出については生体試料破壊器具のBioMasher(株式会社 ニッピ)を、DNA の増幅についてはPCR を行う際にKOD FX DNA polymerase(東洋紡績株式会社)を使用することで、大幅な時間短縮と低コスト化を実現し、3時間以内という短時間かつ低予算での実習が可能となりました。これまでの方法では、DNA の精製が必要であったところを、精製せずに生体試料を破壊した抽出液を直接PCR に使用することが可能であったこと、またKOD FX DNA polymerase のDNA 増幅効率が高いこと(30~40分短縮)が時間短縮の要因であったとしています。
 この新しく開発したメダカ幼魚の性別判断方法は、特別な器具やキットを必要とせず短時間で簡易に行うことができ、また個人情報を扱うことがありません。未成年が所属する高校や大学の初期教育において、DNA 鑑定や遺伝子多型などを学ぶきっかけとして実施しやすい実験であると思われます。なお、この実験は本学が行っている中高生対象の『夏休み薬学教室』において、昨年実施されています。今年も『夏休み薬学教室』はじめとした高校生対象の講座で実施される予定です。
〈論文タイトル〉メダカ幼魚の簡易・迅速な性別判断方法
〈 掲 載 誌 〉医学と生物学 第155巻 第2号 (2011年2月 発行)

【お問い合わせ先】
東邦大学 経営企画部 広報担当 森上 需
〒274-8510 千葉県船橋市三山2-2-1 E-mail: press@toho-u.ac.jp
TEL/FAX:047-472-1159 M Phone: 090-8722-8471