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プレスリリース 発行No.065 平成21年6月17日

Boxをかぶるとできるものが変わる!?
~パラジウム触媒の新たな妙技を発見~

 「触媒で使用されるパラジウムにBoxをかぶせることで、触媒の性質が変り、生成物を作り分けることができること」を、東邦大学薬学部 薬化学研究室 加藤 恵介 准教授らの研究グループ(教授:秋田弘幸)が明らかにしました。この研究論文が、世界的に権威のある学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition」 において高い評価を得て、2009年18号のインサイドカバー(P3194)へ掲載されました。(本文P3326)
パラジウム触媒
 パラジウムは貴金属として知られ、身近なところでは装飾品や歯科材料で利用されているほか、自動車の排ガス浄化触媒などに使われています。化学工業でもパラジウム触媒は重要で、例えばエチレンからアセトアルデヒドを製造する触媒として利用されています。
 一般に、触媒となる2価のパラジウムは、そのままの状態では、酸素原子にも三重結合(アルキン類)にも反応性を示します。加藤准教授らは、2価のパラジウムに ビスオキサゾリン(box) をかぶせることで、酸素原子への反応性が抑えられ、三重結合(アルキン類)への反応性が著しく向上することを見い出しました。例えば、二つの酸素原子および三重結合を併せ持った A(上図) に、パラジウム触媒を使ってカルボニル化を行うと、酸素原子とも三重結合とも反応するため、複数の生成物 B~D(上図) ができます。しかし、ここでパラジウムにboxをかぶせることで、三重結合とのみ反応し、β-メトキシアルキレート構造を持った E(上図) だけを収率良く得ることができました。この反応は、室温で進行し、また様々な形のアルキン類に適用できます。この反応を報告する以前から、加藤准教授らは、boxをかぶせることで生成物が変わる現象を、すでにいくつか見い出していますが(加藤ら, Synlett 2007, 638. & Chem.Comunn. 2008, 3687.)、このような反応は、国内外で報告された例がほとんどありません。また、β-メトキシアルキレート構造は、抗生物質のような天然有機化合物中に多く見出される構造単位なので、今後様々な生理活性物質の合成に利用されることが期待されます。
〈論文タイトル〉 
Intermolecular Methoxycarbonylation of Terminal Alkynes Catalyzed by Palladium(Ⅱ) Bis(oxazoline) Complexes
〈  著 者  〉 
Keisuke Kato, Satoshi Motodate, Tomoyuki Mochida, Takuya Kobayashi, and Hiroyuki Akita

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 東邦大学 経営企画部 広報担当   森上 需
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