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泌尿器科学講座(大橋)

所属教員名

関戸 哲利 / 教授 
竹内 康晴 / 講師
澤田 喜友 / 助教
新津 靖雄 / 助教
渡邊昌太郎 / 助教

運営責任者

講座の概要

東邦大学医療センター大橋病院泌尿器科は、昭和39年 (1964年) 大橋病院開院とともに開設されました。平成4年 (1992年) 松島正浩教授が初代教授に就任、平成19年 (2007年) 三浦一陽教授が第二代教授に就任され、平成24年 (2012年) 1月に第三代教授として関戸哲利教授が赴任し、現在に至っております。松島先生は、「膀胱発癌に対するtryptophan代謝」などを研究され、三浦先生は、「不妊症治療」や「男性性機能」を研究され、講座の礎を築かれました。関戸教授は「下部尿路機能障害」の研究を専門とし、排尿機能学会、老年泌尿器科学会、脊髄障害医学会の理事としても活躍されており、低活動膀胱に関する研究では国際的にも有名です。

研究の概要

(ア) 低活動膀胱に対する診断、治療に関する検討
 神経因性排尿筋低活動(detrusor underactivity, DU)の原因としては、核下型神経因性下部尿路機能障害、中でも腰部脊柱管狭窄症(Lumber canal stenosis, LCS)に代表される馬尾神経障害があります。LCSの動物モデルであるLCSラットにタムスロシンとジスチグミンを投与すると、排尿時膀胱内圧には変化を認めず、膀胱容量と残尿量が有意に低下しました。尿道内圧については、タムスロシン投与で有意に低下しましたが、ジスチグミン投与での変化は認められませんでした。PGE2受容体であるEP2とEP3受容体の両者にアゴニスト作用のある薬剤(ONO-8055)を投与すると、膀胱容量、排尿時膀胱内圧、残尿量、尿道内圧が有意に低下しました。一方、糖尿病ラットモデルを用いた検討では、排尿圧はタムスロシンの投与により有意に低下、ジスチグミンの投与により有意に増加しましたが 、いずれの薬剤も残尿量と残尿率には有意な効果を及ぼしませんでした。一方、EP2/3受容体作動薬は、残尿量を有意に減少させ、残尿率を減少させる傾向を示しましたが、排尿圧には有意な影響を及ぼしませんでした。また、いずれの薬剤とも、膀胱容量には有意な影響を与えませんでした。ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおいては、いずれの薬剤とも膀胱容量に対しては影響せず、ONO-8055は残尿量を減少させました。薬物療法によって、協調性のある有効な収縮を膀胱に生じさせるのは困難ですが、膀胱求心路と尿道平滑筋は治療標的になりうると考えています。

(イ) 骨盤臓器脱におけるLUTSのメカニズムの検討
 LUTS (Lower Urinary Tract Symptoms)はPOP(pelvic organ prolapse)の主要な症状の一つであり、その評価は重要です。しかし、POPの重症度や下垂臓器とLUTSとの関係に関しては十分には検討されていません。我々はdynamic MRIを用いた検討により、過活動膀胱の発生には子宮頸部の支持の破綻が、過活動膀胱の悪化には膀胱の支持の破綻が影響する可能性を見出し、現在、データの解析を続けています。

(ウ) 膀胱癌に対するセカンドTURBTに関する検討
膀胱癌に対する、初回の経尿道的膀胱腫瘍切除(TURBT)後に、同部位に再度切除術を施行するセカンドTURBTは、T1あるいはTa高グレード腫瘍に対する、より正確な病理評価を行う上での重要な手術です。セカンドTURBTは病理組織診断の向上に寄与し、より完全な腫瘍切除が可能となります。当科でのセコンドTURBT症例における検討を実施したところ、腫瘍残存率25%、筋層浸潤癌へのアップステージ無しとの結果でした。我々の考察として、3cm以上の腫瘍では腫瘍基部と周囲まで含めたTURを行う必要がある一方、3cm未満の腫瘍では初回TURで筋層を含む十分な切除が行われていればセカンドTURの診断・治療的意義は限定的であると考えられました。

(エ) 上部尿路結石に対する内視鏡治療の有効性と安全性に関する検討
当科における検討では、stone free rateを指標とすると、腎結石に対する成績は、上腎杯 75%、中腎杯 100%、下腎杯 94%、結石長径20mm未満と以上 (93% vs. 11%) とで有意差を認めました。合併症としては、尿管損傷1例、腎盂損傷1例、術後水腎1例、尿路感染3例を認めましたが、全例、保存的に改善しました。尿管結石の成績は、上部85%、中部95%、下部 94%であり、結石長径10mm未満と以上 (94% vs. 81%)、上部尿路結石では術前尿管ステント留置の有無 (93% vs. 65%) で治療成績に有意差が認められました。合併症は術中粘膜損傷2例、術後尿路感染症2例を認めましたが全例保存的に改善しました。尿管結石の合併症である結石性腎盂腎炎に関する検討も実施しました。敗血症の予測因子は、多変量解析において、女性 (オッズ比 10.5)、75歳以上 (オッズ比 6.06) であることが明らかとなっています。

(オ) 前立腺癌に対するホルモン療法の有効性と安全性に関する検討
当科での検討では、患者年齢の中央値は78歳、治療前のPSA中央値は20.35ng/mLでした。J-CAPRAリスク別にOS、PSA-PFSにおいて検討したところ、OSはJ-CAPRA低リスクに対し中、高リスクで短縮が認められ(Log-rank test : p=0.0338、p=0.0005)、CSSは低リスクに対し中・高リスクで(Log-rank test : p=0.0212、p<0.0001)、中リスクに対し高リスクで短縮が認められました(Log-rank test : p=0.0189)。PSA-PFSは低リスクに対し中・高リスクで(Log-rank test : p=0.0002、p<0.0001)、中リスクに対し高リスクで短縮が認められました(Log-rank test : p=0.0015)。多変量解析の結果、OS に関してはG7以上と遠隔転移有が負の予測因子、PSA-PFSに関しては、cT3b以上と、遠隔転移ありの2項目が統計学的に有意な負の予測因子でした。

代表論文


  • Sekido N, Otsuki T, Kida J, Mashimo H, Wakamatsu D, Okada H, Matsuya H. EP2 and EP3 receptors as therapeutic targets for underactive bladder/detrusor underactivity due to diabetic cystopathy in a type 1 diabetic rat model. Low Urin Tract Symptoms (accepted Apr. 19. 2020)

  • Sekido N, Igawa Y, Kakizaki H, Kitta T, Sengoku A, Takahashi S, Takahashi R, Tanaka K, Namima T, Honda M, Mitsui T, Yamanishi T, Watanabe T. Clinical guidelines for the diagnosis and treatment of lower urinary tract dysfunction in patients with spinal cord injury. Int J Urol. 2020 Epub 2020 Feb 19.

  • Sekido N, Kida J, Otsuki T, Mashimo H, Matsuya H, Okada H.:Further characterization of a novel EP2 and EP3 receptor dual agonist, ONO-8055, on lower urinary tract function in normal and lumbar canal stenosis rats. Low Urin Tract Symptoms 2020: 12: 99-106.

  • Wyndaele JJ, Birch B, Borau A, Burks F, Castro-Diaz D, Chartier-Kastler E, Drake M, Ishizuka O, Minigawa T, Opisso E, Peters K, Padilla-Fernández B, Reus C, Sekido N:Surgical management of the neurogenic bladder after spinal cord injury. World journal of urology 36:1569-1576, 2018

  • Matsuya H, Sekido N, Kida J, Mashimo H, Wakamatsu D, Okada H. Effects of an EP2 and EP3 Receptor Dual Agonist, ONO-8055, on a Radical Hysterectomy-Induced Underactive Bladder Model in Monkeys. Low Urin Tract Symptoms. 2018 May;10(2):204-211. doi: 10.1111/luts.12166. Epub 2017 Apr 25.

  • Sekido N, Yoshino T, Takaoka E, Waku N, Tanaka K, Nishiyama H, Ochi H, Satoh T: Impact of Adjuvant Radiotherapy and Reversibility of Neurogenic Bladder on Bladder Storage Function and Impact of Urethral Resistance on Bladder Emptying Function after Radical Hysterectomy. Open Journal of Urology 2017: 7 :252-265

  • Sekido N†, Kida J†, Mashimo H†, Wakamatsu D†, Okada H†, Matsuya H†: Promising Effects of a Novel EP2 and EP3 Receptor Dual Agonist, ONO-8055, on Neurogenic Underactive Bladder in a Rat Lumbar Canal Stenosis Model. The Journal of urology. 196 (2) :609 - 616 , 2016

  • Sekido N†, Kida J†, Wakamatsu D†, Okada H †, Matsuya H†: Effects of α1 Antagonist and Cholinesterase Inhibitor on Cystometric Parameters in Lumbar Canal Stenosis Rats With Underactive Bladder. Urology 84 (5) :1248.e9 -1248.e15 , 2014

  • Sekido N†, Jyoraku A, Okada H, Wakamatsu D, Matsuya H, Nishiyama H: A novel animal model of underactive bladder: analysis of lower urinary tract function in a rat lumbar canal stenosis model. Neurourology and urodynamics 31 (7) :1190 -1196 , 2012

  • Sekido N: Bladder contractility and urethral resistance relation: what does a pressure flow study tell us? Int J Urol. 19(3):216-228, 2012

教育の概要

学部

大学教育はその後の医師としての方向付けの端緒となる重要な時期でもあります。優れた臨床医という観点からは、「情報を適切に収集・処理し、最も妥当な方針を立案・遂行可能な医師」となれる様な人材を育成する事が医学部教育の目標であると考えます。このためには、疾患の診断や治療方針決定に至る「思考過程」を体得させる「問題解決型」の教育が重要です。医学部講義、4年生の見学型実習、5年生と6年生での選択実習ではこの点を念頭に置いた指導を行なっています。臨床実習では、ドライボックスを用いた腹腔鏡下縫合・結紮の実習、導尿シミュレーターを用いた導尿実習、シミュレーターを用いた泌尿器内視鏡実習などを実施しております。

担当科目
•精巣腫瘍、尿路上皮腫瘍、下部尿路機能障害:東邦大学医学部3年生
•泌尿器科概論:東邦大学医学部4年生 (見学型実習時クルズス)
•尿路性器腫瘍、下部尿路機能障害:東邦大学医学部5, 6年生 (選択実習時クルズス)
•ドライボックス縫合結紮、導尿シミュレーター実習、泌尿器内視鏡シミュレーター実習:東邦大学医学部5, 6年生 (選択実習時クルズス)
•下部尿路機能障害概論:東邦大学大学院生殖生理情報コース

大学院

研究テーマとして、いまだ病態の定義が曖昧で診断や治療も未確立な「低活動膀胱」の基礎•臨床研究に取り組んでおります。基礎研究においては病態モデルの確立に一定の成果が得られました。低活動膀胱に対する新規治療法の開発に向けた研究を発展させたいと考えています。また、臨床研究においては骨盤内悪性腫瘍手術後の低活動膀胱の研究を行なっております。この他のテーマとして、骨盤臓器脱と下部尿路機能障害との関係に関する臨床研究を行なっております。
医学研究科博士課程のカリキュラム詳細については以下参照願います。
http://www.toho-u.ac.jp/med/graduate/medgrad_major.html

診療の概要

 東邦大学医療センター大橋病院泌尿器科のホームページ (https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/urology/) をご覧下さい。

その他

社会貢献

市民公開講座
医師会生涯教育セミナー
東邦大学医療センター3病院の医師を中心とした泌尿器科レジデントマニュアルの作成 (泌尿器科グリーンノート, 中外医学社, 2019)

学会活動

日本泌尿器科学会代議員
日本排尿機能学会理事
日本老年泌尿器科学会理事
日本脊髄障害医学会理事
過活動膀胱診療ガイドライン作成委員
脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン作成委員 (委員長)
パーキンソン病における下部尿路障害診療ガイドライン作成委員
二分脊椎に伴う下部尿路機能障害の診療ガイドライン作成委員
夜間頻尿診療ガイドライン作成委員

日本泌尿器科学会 https://www.urol.or.jp/top.html
日本排尿機能学会 http://japanese-continence-society.kenkyuukai.jp/
日本脊髄障害医学会 http://www.jascol.jp/
日本老年泌尿器科学会 http://square.umin.ac.jp/sgu/
日本泌尿器内視鏡学会 http://www.jsee.jp/
国際禁制学会 https://www.ics.org/
国際泌尿器科学会 http://www.siu-urology.org/
日本癌学会 http://www.jca.gr.jp/
日本癌治療学会 http://www.jsco.or.jp/jpn/
日本感染症学会 http://www.kansensho.or.jp/
女性骨盤底医学会 http://www.jfpfm.jp/
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151