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形成外科学講座(大橋)

所属教員名

林  明照 / 教 授
平田 晶子 / 院内講師

運営責任者

講座の概要

当教室ではより良いQOLを目指すことを基本理念におき、臨床・先端的研究・教育に積極的に取り組んできました。
教室は、平成元年東邦大学医学部外科学第2講座より独立後、形成外科学研究室新設に至り、平成4年に丸山 優(名誉教授)が初代主任教授に就任、平成5年には医学部形成外科学講座へ昇格しました。平成8年に付属大橋病院に診療科を開設(主任:岩平佳子→大西 清)、平成12年には付属佐倉病院に診療科を開設(主任:大西 清→林 明照)しました。平成24年に大西 清(名誉教授)が2代目主任教授に、令和2年に林 明照が主任教授に就任し、現在では大森病院を中心に医療センター3病院および関連病院にて診療、研究、教育を展開しています。

研究の概要

教室自己点検、自己評価および今後の教室発展の指針のひとつとしてJournal Citation Reportsの Impact Factor による刊行論文業績の評価をふまえ、臨床、研究活動に取り組んでいます。
  • 超音波断層装置を用いた顔面骨骨折整復位の術中評価
    超音波断層装置(以下エコー)は、低侵襲で繰り返し施行でき、さまざまな施設で頻用されている検査装置です。顔面骨骨折、特に鼻骨骨折では術者の主観と経験による手術がなされてきましたが、近年エコーによる顔面骨骨折に対するリアルタイムな整復位の評価が注目され、当科では2013年から本法を取り入れています。簡便に骨片の位置や形態評価をリアルタイムに行うことができ、良好な整復位を得ることが可能となりました。症例の蓄積とともに、フィードバックや評価、解析を行い、今後も適応の拡大を進めていきます。
  • ナビゲーションシステムを併用した頭蓋顎顔面外科手術
    脳外科手術用に開発された手術用ナビゲーションシステムを応用し、骨折整復の術中評価、耳鼻科領域の手術にも応用されており、当科でも2007年から頭蓋顎顔面外科手術に本システムを取り入れています。骨折整復の術中評価、移植骨の骨量の把握や移植位置の確認、陳旧性骨折治療における骨切りガイドなど、術中により正確な三次元的位置関係の解析、評価を行い、良好な治療成績を得ています。
  • 皮弁移植術・マイクロサ-ジャリ-
    新しい皮弁の開発や新たな応用を常に追求してきました。基礎的には、皮弁血管解剖、血管内視鏡による血行動態の解析など、皮弁による修復法を血行概念別に整理し、四肢、体幹、頭頚部など部位別に特殊性を加味した各種皮弁を開発・応用しています。また低侵襲手術の概念を提唱し、主要血管を温存した皮弁や移植法の開発、必要構成成分のみの組織移植法の開発、内視鏡下の皮弁作成術や移行術を行ってきました。
  • 頭蓋顎顔面外科
    良性・悪性腫瘍切除後・外傷後変形、頭蓋底再建手術をはじめ、骨固定・骨切り術・腫瘍摘出術などの工夫を行ってきました。 顔面の再建では、機能・整容の両面を考慮したsubunit, miniunit principleを提唱、具現化し、解剖学的知見に加え、コンピュータ解析、3次元実体モデルなどを駆使して、形態の再現や術前後のシミュレ-ション評価を行っています。

代表論文


  1. Ogino A、Maruyama Y、 Onishi K、Inami K:Tie-over Dressing Technique Using Rubber Bands for Skin Graft. Wounds 18:162-165, 2006
  2. Onishi K、Maruyama Y:Dorsal Metacarpal Adipofascial Flaps for Palmar Finger and Hand Reconstruction. Ann Plast Surg 57:203-205, 2006
  3. Hirata A、Maruyama Y、 Hayashi A、Shibuya K、Harada T:Observation of osteogenesis in the pores of porous hydroxyapatite with an attachment of vascularized periosteum with computer added images using a three-dimensional reconstruction method. J Jpn Soc Simulation Surg 14:59-62, 2007
  4. Ogino A, Onishi K, Maruyama Y:Intraoperative repositioning assessment using navigation system in zygomatic fracture. J Craniofac Surg 20:1061-1065, 2009
  5. Onishi K, Ogino A, Saida Y, Maruyama Y:Repair of a recurrent rectovaginal fistula using gluteal-fold flap: report of a case. Surg Today 39:615-618, 2009
  6. Utsunomiya M, Nakamura M, Nakanishi M, Takagi T, Hara H, Onishi K, Yamada T, Sugi k : Impact of wound blush as an angiographic end point of endovascular therapy for patients with critical limb ischemia. J Vasc Surg 55:113-21,2012
  7. Yamada T, Onishi K, Utsunomiya M, Nakamura M: Our treatment strategy for critical limb ischemia. Int J Vasc Med 437471,2013
  8. Onishi K, Okada E, Hirata A: The Rintala flap: a versatile procedure for nasal reconstruction. Am J Otolaryngol 35:577-581,2014
  9. Ogino A, Onishi K, Yamada T:Navigation-Assisted Bone Grafting for Blowout Fracture. J Craniofac Surg 27:328-330,2016
  10. Nakamichi M, Akishima-Fukasawa Y, Fujisawa C, Mikami T, Onishi K, Akasaka Y: Basic Fibroblast Growth Factor Induces Angiogenic Properties of Fibrocytes to Stimulate Vascular Formation during Wound Healing. Am J Pathol 186:3203-3216,2016
  11. 林 明照: 【顔面神経麻痺の形成外科的治療-最近の話題】側頭筋による笑いの再建の新たな展開 島状側頭筋移行術. 医学のあゆみ268(10): 831-836, 2019
  12. 平田晶子、岡田恵美、望月聖太、縄田麻友: 大陰唇に生じた低色素性基底細胞癌の1例. 日本形成外科学会会誌 39 (4) :187 -192 , 2019

教育の概要

学部

3年生 形成外科学(4コマ)、救急医学(重症熱傷)(1コマ)
到達目標:形成外科治療の目標は、正常状態に復元することを基本とし、整容的により美しく、機能的改善も重視し、さらに患者自身を満足させうることです。本授業では、解剖学・発生学に基づく各疾患の基礎的理解と治療へのアプロ-チを含めた形成外科学に関する知識習得を第一目標としています。

4年生、5年生、6年生 臨床実習
到達目標:解剖学・発生学に基づく各疾患の基礎的理解と治療へのアプロ-チや、典型的な症例について基本的な診療経験、基本的手術手技の修得を目標とします。更に外傷や炎症、手術などが生体へおよぼす侵襲、生体反応、創傷治癒についての理解など外科総論の知識についての習得を目的としています。

大学院

医学専攻博士課程
高次機能制御系 形成外科学
特論I・II(4単位)、演習(12単位)、実習(4単位)
到達目標:形成外科疾患の病態を理解し、診断および治療法の概念を学びます。指導教授のもとに臨床症例を経験し、日本形成外科学会が定める専門医として認定される基準を最低線の到達目標としています。一方、形成外科学講座で行われている研究活動を中心に、形成外科臨床研究の基本的な方法論を身につけ、研究テーマを定めて自らの活動を開始し、研究を自分で展開していける能力の獲得を目指しています。

診療の概要

  • フットケア外来 近年、糖尿病や人工透析患者の増加に伴い、末梢動脈疾患(peripheral arterial disease; PAD)や重症下肢虚血(critical limbs ischemia; CLI)の症例数が増加傾向にあります。PADによる下肢難治性潰瘍に対する治療は、施設や受診した診療科により治療方針が異なり、救肢可能な症例に対しても大切断を余儀なくされることも少なくありません。

    当院では、2010年7月より形成外科、循環器内科、糖尿病内科、腎臓内科が中心となり関連各科が連携した毎週水・木曜日の午後にフットケア外来を開設し、「足の創傷」に対する治療を行っています。糖尿病や閉塞性動脈硬化症、末梢循環障害などを原因とする足の病変の治療や予防、いわゆる「救肢」を目的としたメディカルフットケアです。現在、形成外科医1名、循環器内科医1名、腎臓内科医1名、糖尿病療養指導士1名、糖尿病認定看護師1名による診療を基本とし、さらに隔週で足専門の義肢装具士によるフットウェアの診療も併設し、包括的な予防と早期治療を目指し、フットケアチームが一丸となって下肢救済に取り組んでいます。

    当院における治療アルゴリズムに基づき、初診時に基礎疾患の評価と全身状態の精査も同時に行い、血管内治療(endovascular treatment; EVT)と手術の適応を検討しています。また、下肢動・静脈エコーや足関節/上腕血圧比(ankle brachial pressure index; ABI)、皮膚灌流圧(skin perfusion pressure; SPP)などを行い、創傷への血流の有無を確認し、EVTと手術の適否を検討します。透析患者では腎臓内科医とともにEVTや手術の日程にあわせて透析日を調整し、迅速な治療を実践しています(図1)。

    さらに、さまざまな病変や手術に伴う足変形に対して、足病変専門の義肢装具士による治療靴の処方により、足病変の再発予防を行っています。

    これまで大切断を余儀なくされてきた症例でも、EVTやバイパス術、手術などを組み合わせることで、「歩ける足」で自立した生活を取り戻した症例は多数あり、良好な治療成績を得ております。また、このようなフットケアチーム体制のもと、院内で横断的で迅速な治療を提供している施設は全国的にも未だに少ないことから、当院の取り組みは近隣の医療施設のなかでも認知度は高く、フットケアの対象となる症例に対する病病連携体制も確立されています。
図1 重症下肢虚血における治療アルゴリズム
EVT不可能または、EVT後に足部での手術が不可能と判断した場合、バイパス術、大切断術、保存的加療などを選択する。
  • 再建外科
    欠損に適した再建方法を選択し、良好な治療成績を得ています。
  • Unit原理を応用した顔面の再建
    顔面をunitに分割して再建することにより、きずあとの目立たない、よりきれいな修復を行うことができます。皺線だけでなく光の与える明るさ、影なども考慮した再建を実践しています。
  • より正確な頭蓋顔面硬組織再建
    骨折、手術などに起因する硬組織の再建では、実体モデルを用いた手術シミュレーションや超音波検査・ナビゲーションシステムなどを併用した手術により、より正確な再建を行っています。

その他

学会活動

主な主催学会
  • 1996年第1回形成外科内視鏡手術研究会
  • 1999年第26回日本マイクロサージャリー学会
  • 2001年第10回日本形成外科学会基礎学術集会
  • 2004年第22回日本頭蓋顎顔面外科学会
  • 2004年第4回国際・第14回日本シミュレーション外科合同学会
  • 日本第2009年第52回日本形成外科学会総会学術集会
  • 2014年第24回日本シミュレーション外科学会
  • 2017年第22回日本形成外科手術手技学会
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
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TEL:03-3762-4151