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整形外科学講座(大橋)

所属教員名

武者 芳朗  / 教 授
池上 博泰  / 教 授
望月 雄大  / 講 師
中山 隆之  / 助 教
羽田  勝  / 助 教
豊田 真也  / 助 教

運営責任者

講座の概要

  1. 理念・方針
     整形外科、運動器疾患全般に亘り治療成績向上のために、他施設と違った独自性を追求し、言わば「ベンチャー」を目指している。常に先進性を視野に、いっそう進化した新しい術式、新技術の開発とともに、それを支える新素材をもちいた新しい生体材料の開発、医療機器の応用、合併する疼痛に対する緩和治療における新しい概念、方法について、さらに研究を続けて行く。
  2. 診療内容・特色および研究
     当講座は、平成22年11月から始動した東邦大学医療センター大橋病院脊椎脊髄病センターを併設している。大橋は、飯野以来、世田谷、目黒区、渋谷区を中心とした山の手地区で手外科の基幹施設として地域医療に貢献してきた。さらに充実させる必要があったことから、平成24年4月から「肩・肘・手外科」のSpecialist、池上を招聘、特殊外来が稼働している。さらに金子の膝関節および砂川の股関節と下肢の人工関節外科は順調に稼働を伸ばし、学会やマスコミにも評価を受けている。今日われわれは脊椎・脊髄、上肢および下肢と専門分野を広げ、人体の中枢から末梢まで診療範囲を充実することができた。
    これは整形外科としては理想的である。今後の発展と新生大橋病院への貢献に責務を感じている。

研究の概要

  1. 整形外科と脳神経外科が合体した脊椎・脊髄外科
    脊椎外科は脳神経外科と整形外科にまたがる領域であるが、当センターは両者が統合一体化した全国的にも数少ない施設である。両科の特徴を生かし総合的に治療にあたっている。手術には顕微鏡、内視鏡を用い、安全性、確実性、低侵襲性を高めている。診療上症例数の多い腰部脊柱管狭窄症、椎間板へルニアおよび頚部脊髄症に対する独自の術式を開発し、良好な成績をあげている。頚部脊髄症の筋肉温存型脊柱管拡大術、腰部脊柱管狭窄症に対する筋肉温存型棘突起還納式椎弓形成術、顕微鏡下および内視鏡下椎間板へルニア摘出術などがある。必要があれば脊椎固定術も実施するが、低侵襲手技MISで対応している。一方、一般的には手術療法が選択される疾患に対し当科では独自の保存療法で良好な成績を得ているものもある。腰椎椎間関節嚢腫、頚椎症性筋萎縮症、急性脊椎硬膜外血腫の保存療法などである。また腰椎部に画像診断上異常なく、神経学的にも腰椎疾患では説明不能な腰・下肢痛の一因とされる仙腸関節痛に対し仙腸関節ブロック、持続効果が得られない場合は独自の高周波による熱凝固療法を実施している。
    脊椎脊髄の病気は、自然経過で軽快するものも数多くあるが、その反面色々な治療に抵抗して進行するものも少なくない。症状が進めば進むほど、発症してから時間が経過するほど、治療効果があがらず、後遺してしまうため、早期診断、早期治療に努めている。
  2. 肩・肘・手外科(上肢外科)
     手外科分野は単なる整形外科のsubspecialityの1分野を超えて専門的に独立分化し、独自に発展を遂げている。手外科分野では、上肢を構成する骨、軟骨、関節、靭帯、神経、筋肉、腱などの全てに亘る運動器学(機能、疾患、診断、治療など)を統合的にとらえ、上肢の機能外科として「肩・肘・手外科」とする新たなcategoryが構築されようとしている。中でも上肢の人工関節、殊に肘・肩関節分野ではいまだ国内においては限られた施設でのみ可能なのが現状である。この先進性に着眼し、全国に先駆けて「肩・肘・手外科」として手外科を特化している。オリジナルの人工肘関節や人工肩関節を開発し臨床応用も行い、特に上肢の人工関節置換術においては国内でTOP 5に入る手術数となっている。また関節鏡下手術も肩・肘・手・指関節の全てに行っている。
  3. 下肢外科
    3-1 膝関節、スポーツ外科
    本邦において2015年人工膝関節置換術は8万件に達した。如何に医師主観ではなく、患者様満足度を向上させるかということを念頭に、手術手技、人工関節選択、術後リハビリに重点を置いている。人工膝関節は人工股関節より患者様満足度が低いことが最近の話題である。要因の一つとして人工関節自体が前十字靭帯不全膝であることが挙げられる。H29.4月より前十字靭帯を温存した新しい人工膝関節手術にも取り組んでいる。 またトップレベルのスポーツ選手に多い前十字靱帯断裂、半月板損傷には関節鏡を用いた治療を実施している。

    3-2 股関節外科
    変形性股関節症、発育性股関節形成不全、大腿骨頭壊死症、ペルテス病、大腿骨頭すべり症、股関節唇損傷、FAI(大腿骨臼蓋インピンジメント)、大腿骨近位骨折、骨盤骨折など、股関節疾患を診療、研究している。 変形性股関節症や発育性股関節形成不全は、患者の年齢や股関節の変形の程度によって、薬物療法や運動療法による保存療法、もしくは骨温存術(寛骨臼回転骨切り術など)や人工股関節置換術の手術療法を行なっている。 股関節唇損傷とFAIは、股関節鏡による唇縫合術、関節形成術を行なっている。 人工股関節置換術は、国内で年間約10万件行われている手術である。症例に応じて、従来の後方進入法と脱臼率が少なく関節可動の制限を設けない前方進入法を行なっている。筋間進入により筋損傷を最小限に抑えるMIS(Minimally Invasive Surgery:低侵襲手術法)を用い、手術時間は1時間程度で出血量も少なく、患者は術後10日間前後で杖歩行や独歩で退院している。難易度の高い症例では、ナビゲーションを併用している。 近年では高齢者の骨盤骨折、大腿骨近位骨折やインプラント周囲骨折が増加している。手術療法に骨粗鬆症治療を併用し、二次骨折が起きないようにしている。また、人工骨頭挿入術では脱臼率が少ない共同筋腱温存後方進入を導入している。
  4. 骨軟部腫瘍
    主に骨軟部腫瘍を中心とする整形外科領域の腫瘍性疾患の診療を行う外来です。骨軟部腫瘍は、骨組織に発生する骨腫瘍と、筋肉、脂肪組織、皮下、結合組織、末梢神経などの軟部組織に発生する軟部腫瘍の2つに大きく分かれ、さらにそれぞれ良性と悪性のいずれかに分類されます。骨軟部の悪性腫瘍(がん)は他の臓器に比べて発生頻度は低いものの、その種類は多岐にわたっており、より専門性の高い診断・治療が求められます。
    骨軟部腫瘍を専門とする当外来の中山隆之医師は、とくに初期診断のエキスパートとして評価されており、地域の医療機関から多くの患者さんをご紹介いただいています。患者さんの病態に応じてさらに的確な診断や適切な治療を行うため、がん研有明病院との緊密な連携体制も構築しています。

代表論文

  1. Musha Y, Mizutani K: Cervical myelopathy accompanied with hypoplasia of the posterior arch of the atlas: case report. Journal of Spinal Disorders & Techniques22(3):228-232,2009
  2. Musha Y, Umeda T, Yoshizawa S, Shigemitsu T, Mizutani K, Itatani K: Effects of blood on bone cement made of calcium phosphate: Problems and advantafes. Journal of Biomedical Materials Research Part B: Applied Biomaterials92B(1):95-101:2010
  3. Musha Y, Kaneko T, Yoshizawa S, Sunakawa T, Otani T, Mizutani K, Ito K: Contiguous sagittal split fractures of cervical vertebrae bodies with no neurological impairment. Journal of Orthopaedic Science 18(1):175-180,2013
  4. Kaneko T, Kono N, Mochizuki Y, Hada M, Ikegami H, Musha Y: Comparison of Bone Quality in Patients with or Without Weekly Injection of Teriparatide to Improve Bone ingrowth after Cementless Total Knee Arthroplasty (E-pub). Journal of Biomedical Research and Reviews 1.1:25-30 ,2018
  5. Hada M, Mizu-Uchi H, Okazaki K, Kaneko T, Murakami K, Ma Y, Hamai S, Nakashima Y: Bi-cruciate stabilized total knee arthroplasty can reduce the risk of knee instability associated with posterior tibial slope. Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy26(6):1709-1716,2018
  6. Kaneko T, Kono N, Mochizuki Y, Hada M, Sunakawa T, Ikegami H, Musha Y: The influence of compressive forces across the patellofemoral joint on patient-reported outcome after bi-cruciate stabilized total knee arthroplasty. THE BONE & JOINT JOURNAL100-B(12):1585-1591,2018
  7. Fujimoto T, Kaneko T, Sunakawa T, Ikegami H, Musha Y: levation of fibrin degradation product (FDP) values prevents the negative conversion of serum CRP values after total knee arthroplasty. Journal of Orthopaedics15(4):940-944,2018
  8. Kaneko T, Kono N, Sunakawa T, Okuno Y, Ikegami H, Musha Y: Reliable patient‑reported outcome measure and survivorship of UKA for primary spontaneous osteonecrosis. European Journal of Orthopaedic Surgery & Traumatology29(1):119-124,2019
  9. Mochizuki Y, Kaneko T, Kawahara K, Toyoda S, Ikegami H, Musha Y: "A 2-year follow-up of isolated Medial Patellofemoral Ligament Reconstruction by using soft suture anchor and adjustable cortical fixation system". Journal of Orthopaedics16(4):356-360, 2019
  10. Kaneko T, Kono N, Mochizuki Y, Hada M, Toyoda S, Ikegami H, Musha Y: Midterm Comparison of Tibial Fixation between Posterior Cruciate-retaining and Substituting Porous Tantalum Total Knee Arthroplasty: Three-dimensional Computed Tomography Analysis. The Journal of Knee Surgery.( Epub ahead of print),2019

教育の概要

学部

当整形外科では、運動器疾患や外傷に対するプライマリ・ケアの知識と技能の習得のため、研修医には臨床経験5年以上の医師がマンツーマンで組み、基本手技の指導を行うほか、各専門班の指導医がさまざまな疾患の診療や治療計画について総括的教育を行う。
偏りのない臨床経験を積み、入局後6年で一般的な整形外科の知識、手術手技を習得し、専門医資格取得後、専門分野に進み、人格の育成とともに、エキスパート、関連病院医長として活躍できる整形外科医として研鑽を積む。

大学院

科目概要
 整形外科学は、四肢・体幹の外傷学のほか、関節疾患、脊椎脊髄疾患、リウマチ等の炎症疾患など多岐にわたり、運動器の障害はADL、QOL に大きく影響するため、運動器疾患に対する重要性の認識と専門的知識の習得が必要である。整形外科学におけるエビデンスとして認識されている内容を整理し、整形外科学全般について、成因、病態、診療(診断、検査、治療)ならびにそれらの研究方法に関する専門的知識を習得するとともに、近隣領域についても基本的知識を学習・研究する。臨床技能としては、整形外科学会が定める専門医としての基準を到達目標とする。また、担当教員のもと必要な症例を経験する。
 一方、整形外科学講座で行われている研究活動を中心に、整形外科臨床研究の基本的な方法論を身につけ、研究テーマを定め自らの活動を開始し、研究を展開していける能力の獲得を目指す。なお、授業に費やす時間と同等の予習および復習の学習時間を持つことを原則とする。

到達目標
 運動器疾患に対する正しい理解と、診断能力を習得し、新しい診断技術や治療に対する理解を獲得することを目標とする。さらに、患者情報を把握して収集・解析し、臨床研究を行う能力を獲得する。臨床研究の一部として、多面的な手法による基礎実験、分子レベルや物理学的要素解析などから運動器疾患の基礎的研究、診断や治療についての研究を発展させる能力を獲得する。

診療の概要

2019年度手術件数
手術合計件数
905件
脊椎外科
153件
上肢(肩・肘・手)の外科(外傷含む)
195件
上肢(肩・肘・手)人工関節全置換術
 22件
骨軟部腫瘍(良性・悪性)
 63件
人工膝関節全置換術
 98件
鏡視下(前十字靭帯・半月板など)
 116件
人工股関節全置換術
 81件
足の外科(外反母趾、関節鏡など)
 43件
人工骨頭置換術
 30件
外傷(骨折脱臼含む)
104件

その他

社会貢献

  • 地域の医療機関との連携のもと、高齢者の骨折予防やリハビリ支援に取り組んでいる
    高齢化社会に伴い、骨折で入院されるご高齢の患者さんが増加している。当科では回復期リハビリテーション病院と連携し、患者さんがスムーズに在宅復帰できるよう努めている。 なお、高齢者の骨折の大きな要因として骨粗鬆症が挙げられる。自覚症状に乏しい疾患のため、気がついたときにはかなり症状が進行している場合も少なくない。骨折したことを機に、骨粗鬆症が発見される場合もある。こうした事態を少しでも防ぐため、地域の病院や診療所と連携し、地域の高齢者に骨粗鬆症についての知識を深めていただくための活動を展開していく。
  • 大腿骨頚部骨折地域医療連携クリニカルパスの導入
    近隣の回復期リハビリテーション病院、かかりつけの病院やクリニックでクリニカルパスを共有して共同診療を行う。当院で急性期リハビリを開始し、リハビリテーション専門の回復期リハビリテーション病院に転院し、集中的なリハビリテーションを行っていただくことができるようにしている。転院先の回復期リハビリテーション病院とは情報の共有化を継続する。自宅への退院を目標とし、リハビリテーション専門病院での治療が終了した後は近隣のクリニックで二次骨折予防の骨粗鬆症治療を行う。必要に応じて運動療法や在宅診療も行う。その後も当院と連携医療機関との症例検討会が定期的に開催され、患者さんが満足できるように大腿骨頚部骨折地域医療連携クリニカルパスの向上を目指す。 自宅、退院後も術後レントゲン画像評価や骨粗鬆症検査は当院で診察する。このように急性期医療機関、回復期リハビリテーション病院、かかりつけの医療機関の循環型医療を行い、患者さんが安心できる医療を提供する。

学会活動

  • 骨粗鬆症
    原因、予防治療など、EBMに基づく研究を行い、複数の関連学会で発表している。
  • 脊椎脊髄
    頚部圧迫性脊髄症に対する脊柱管拡大術に独自の工夫を加えた筋肉温存型手術により、神経回復の向上とともに、頚椎可動域の温存をはかり、後方法の欠点とされた術後の可動域の減少を抑えるに至っている。形成椎弓の立体構造に対する検討も続けている。脊柱管狭窄症に対しては筋肉温存型の小切開顕微鏡下手術を確立し実績を上げている。その他の低侵襲手術(MIS,MED)、BKPとその術後の椎体骨折リスクの研究、仙腸関節障害についても独自の研究を続けている。
  • 手の外科
    手の外科、肘、肩を含めた上肢の外科手術症例は豊富である。変形、骨折に関する研究、中でも、進行した変形性肩関節症などに対する「人工肩関節置換術」においては国内でも指折りの手術件数を有しており、受診を希望される患者さんは都内のみならず全国に及ぶ。Dupuytren拘縮のコラーゲナーゼ治療も先んじて実施中である。
  • 膝関節
    人工膝関節全置換術 (Total Knee Arthroplasty; 以下, TKA)は、除痛効果という点では優れた手術手技である。しかしながら、患者満足度の点においては十分とは言えず、TKAを受けた患者のうち約20%は術後結果に不満足であるであると報告されている。 術後患者満足度を低下させる要因の一つに、膝関節不安定感が挙げられる。術後バラン スを獲得した膝は、術後成績を高めると報告されているが、どのような手術術式により 膝関節を安定させるかは未だ不明な点が多い。当科では独自に大腿脛骨関節圧を測定す る為の、7軸圧の圧センサー組み込み型インサートセンサーを開発している。前十字靭 帯代償した人工膝関節(正常膝を誘導する)に対応した初めてのデバイスであり、膝伸 展~深屈曲位における膝関節キネマティクスの評価も可能である。関節圧が術後中期~ 長期臨床成績に及ぼす影響・手術手技が関節圧に及ぼす影響について解析し、関節圧を 用いた新しい人工膝関節の手術手技が開発している。
  • 股関節
    長期耐用を目指した改良、脱臼・ゆるみ・関節摺動面の摩耗などの合併症を減じるために、カップやステムの正確な三次元的設置位置が重要で、近年ではナビゲーションシステムが導入されている。さらに術前に骨格モデルを作成することにより、より正確なインプラントの設置を目指す。
  • 低反応レベルレーザー治療と侵害受容性疼痛に関する研究
    低反応レベルレーザー治療(LLLT)による多くの生体反応のうち疼痛緩解について、VAS、プロスタグランジンE、サブスタンスPなど、種々の炎症疼痛マーカーについて検討している。
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