医学部

メニュー

眼科学講座(大森)

所属教員名

堀 裕一  / 教 授
松本 直  / 准教授
高木 誠二 / 講 師
岡島 行伸 / 助 教
加藤 桂子 / 助 教
熊代 俊  / 助 教
柿栖 康二 / 助 教
内匠 秀尚 / 助 教
松村 沙衣子/ 助 教

眼疾患先端治療学講座(寄付講座)
鈴木  崇 / 准教授(寄付講座)

運営責任者

講座の概要

当教室の歴史は古く、大正14年付属病院が開院当時初代教授長谷川俊明先生のもと発足しました。以降2代目須田信濃夫先生、3代目須田経宇先生、4代目戸塚清先生、5代目大岡良子先生、6代目河本道次先生、そして7代目松橋正和先生、栃久保哲男先生の2人教授体制を経て平成26年より堀裕一教授が主宰されております。我々の教室の方針は専門医取得までは白内障手術や一般眼科診療など眼科医に必要な基本的な手技、疾患を学び、専門医取得以降角膜疾患、網膜硝子体疾患や小児眼科などの専門性の高い分野を身につけ医局全体であらゆる高難度眼科疾患に対応できるよう努めることであります。2018年4月には寄付講座として眼疾患先端治療学講座を設置し、鈴木崇先生が准教授(寄付講座)として着任されました。眼疾患先端治療学講座では、眼表面疾患に対する最先端の治療の開発や有効性の確認を行っています。

研究の概要

当講座は大きく前眼部部門、後眼部部門、小児眼科部門に分かれており各々の部門で実臨床から生じた疑問を解決すべく基礎、臨床研究を行っています。特に3部門には共通した ‘’眼微小循環から病態を解明する‘’という テーマが存在し、レーザースペックル・フローグラフィーという日本発の眼血流を測定する機器を用いた基礎、臨床研究を行っています。以下に各部門の研究内容を紹介します。

前眼部
  1. 眼球および付属器における血流動態についての研究
    緑内障点眼薬の結膜血流に対する影響、温罨法の眼瞼血流への影響を検討し、病態解明について臨床研究を行っております。
  2. 眼表面ムチンの発現および機能に関する研究
    涙液層および眼表面上皮に発現するムチンを研究し、眼表面の水濡れ性およびバリア機能の解明を目標にしております。また、ドライアイおよび各種オキュラーサーフェス疾患の病態解明を追求しています。
  3. 眼感染症における重症化メカニズムの遺伝子解析
    様々な角膜および眼感染症において、原因微生物の遺伝子解析を行い、重症化メカニズムについて検討を行っています。本研究は本学微生物学講座との共同研究で行っています。
  4. コンタクトレンズ装用が角膜に与える影響についての研究
    コンタクトレンズ装用が角膜および眼表面に与える影響について、生物学的および光学的に検討を行っています。またコンタクトレンズ装用による近視促進抑制効果について検討の検討も行っています。
  5. 流涙症を来す疾患の病態および原因についての研究
    各種流涙を来す疾患(涙道閉塞、角結膜炎など)についての病態および原因についての研究を行っています。特に涙道閉塞については、新しい涙道内視鏡および涙管チューブの開発研究を行っています。
  6. 新しい角膜移植術の開発および臨床研究
    各種角膜移植術(全層移植、表層移植、深層移植、内皮移植、培養上皮移植)における新しい術式およびその手術器具の開発を行っています。


後眼部
後眼部部門の研究は全身状態から眼底疾患を解明することを命題としています。
  1. 眼底循環と全身疾患との関連についての研究
    網膜および視神経の眼底血流と全身疾患(循環器疾患、呼吸器疾患、腎疾患)との関連についてレーザースペックル・フローグラフィを用いて研究を行っております。眼は心の窓といわれています。全身の動脈硬化は心・脳血管病の第一危険因子であり、その状態を正確に、また包括的に捉える方法論は種々報告されております。しかしながら古くは全身の動脈硬化診断は眼底血管を観察することで行ってきました。我々は眼底検査より詳細で定量的な方法で全身の動脈硬化を検出する方法を研究してきました。そして、眼底血流は年齢に起因して変動すること、即ち眼血管年齢が存在することを報告しました(Shiba T, et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2012)。また、頸動脈の肥厚、粥状硬化は心・脳血管病の重要な危険因子でありますが眼底血流を解析することで異常値を高い診断能力で検出しえることも見出しました(Rina M, et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2012)。
    このように眼底血流が反映する全身血管機能・形態変化のなかで、脳・心血管病の危険因子となる種々の動脈硬化病態における臨床的意義を解明し、今後高齢化社会で増加が懸念される動脈硬化に起因する脳・心血管病のリスクを眼底血流で簡便に把握することで、眼科領域から新しい健診システムや生理学的検査法を提供できると確信しています。
    現在は腎臓センターとの共同研究で腎臓移植前後における眼底血流変化の研究を行っています。
  2. 睡眠時無呼吸症候群が眼科領域に及ぼす影響
    睡眠時無呼吸症候群は日中の眠気など主に運転業務等の職種に重要な疾患であります。しかしながら睡眠時無呼吸症候群は高血圧や心血管病の重要な危険因子であることが明確になっています。我々は睡眠時無呼吸症候群の影響は微細な血管を有する眼底により強いと考えました。そして臨床研究を行い睡眠時無呼吸症候群は糖尿病網膜症の重症化における重要な危険因子であることを明確にしました(Shiba T, et al. Am J Ophthalmol 2009, 2010, 2011)。また、無呼吸の重症化は網膜を薄くすることを報告しました。即ち緑内障の危険因子になる可能性があることを日本人で明確にしました(Shiba T, et al. Am J Ophthalmol 2014)。今後我々は更に睡眠時無呼吸症候群が眼科領域に与える影響をより詳細に研究していく予定です。

小児眼科
  1. 新生児における眼底血流の研究
    小児医療の進歩により未熟児の死亡率は低下しています。とても喜ばしいことですが、未熟児に起因する未熟児網膜症症例も増加しており、深刻な問題であります。我々は、未熟児網膜症を眼底血流の観点から病態解明を目指しております。新生児用レーザースペックル・フローグラフィーを開発し、新生児・未熟児の眼底血流測定に再現性が良好に応用可能であることを明確にしました(Matsumoto T, et al. Biomed Res Int. 2015, Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2016 ) 。今後はさらに未熟児網膜症の進行メカニズムや治療効果について詳細に眼底血流の観点から研究を行う予定です。


眼疾患先端治療学講座(寄付講座)について
眼科疾患に対する先端的な治療の研究、開発に焦点をあて、臨床に利用できるようなデータを蓄積しています。具体的には下記の項目で研究を行っています。
  1. 多血小板血漿点眼の角膜疾患への有効性 
    角膜は無血管な透明な組織でありますが、なんらかの疾患が生じると角膜上皮や実質などの組織が障害され、バリア機能が低下するのみでなく、視力低下や疼痛などの症状を引き起こします。通常は、組織修復が速やかにされるのですが、強い障害の場合は、創傷治癒が遅延する場合もあります。多血小板血漿には、多くの成長因子が含まれており、角膜の細胞の増殖を促す効果が期待されています。ただ、その機序などまた不明な点も多いです。多血小板血漿の角膜におけるメカニズムを解明し、臨床応用可能な疾患などを探索することを目的として研究を行っています。
  2. 角膜クロスリンキングにおける酸素の役割
    角膜クロスリンキングは、リボフラビンという特殊な溶液を角膜に浸透させ、紫外線を照射することによって、活性酸素を生じ角膜の組織を硬くします。そのため、円錐角膜などの角膜疾患の治療に応用されています。クロスリンキングによって、組織内の酸素が消失し、そのため、効果が減弱することが知られています。クロスリンキングの効果を持続させるために、酸素をコントロールすることに着目し研究を行っています。
  3. 眼感染症における診断
    眼感染症を引き起こす病原体は細菌からウイルスまで幅広く存在していますが、検査に使用するサンプル量もわずかなため、検出できないこともしばしばあります。眼感染症の原因微生物を適切に検出する方法について検討を行っています。
  4. 眼科マテリアルの基礎的検討
    眼科治療において、コンタクトレンズや眼内レンズは、欠かせないデバイスになっています。一方、素材や加工方法が開発され、新たなデバイスが次々と出ています。それらのデバイスの臨床応用に向けての基礎的検討を行っています。

代表論文

眼科学講座(大森)の近年の論文

  1. 渡邊 綾、糸川貴之、岡島行伸、鈴木 崇、堀 裕一. 白内障術後患者における年齢と眼表面温度の関係. 日本眼科学会雑誌2020 in press.
  2. 田島彬子、有村 哲、熊代 俊、柴 友明、堀 裕一. 転移性眼内炎に対する小切開硝子体手術成績. 眼科62(2):159-164, 2020
  3. Shiba T, Takahashi M, Matsumoto T, Hori Y. Sleep-Disordered Breathing Is a Stronger Risk Factor for Proliferative Diabetic Retinopaty than Metabolic Syndrome and the Number of Its Individual Components. Semin Ophthalmol. 34(2):59-65, 2019
  4. Shiba T, Takahashi M, Matsumoto T, Hori Y. Gender difference in the influence of obstructive sleep apnea on optic nerve head circulation. Sci Rep. 9(1):18849, 2019
  5. Kobayashi T, Shiba T, Kinoshita A, Matsumoto T, Hori Y. The influence of gender and aging on optic nerve head microcirculation in healthy adults. Sci Rep. 9(1):15636, 2019
  6. Kobayashi T, Shiba T, Nishiwaki Y, Kinoshita A, Matsumoto T, Hori Y. Influence of age and gender on the pluse waveform in optic nerve head circulation in healthy men and women. Sci Rep. 9(1):17895, 2019
  7. Itokawa T, Okajima Y, Suzuki T, Kobayashi T, Tei Y, Kakisu K, Hori Y. Association among Blink Rate, Changes in Ocular Surface Temperature, Tear Film Stability, and Functional Visual Acuity in Patients after Cataract Surgery. J Ophthalmol. 2019.8189097, 2019
  8. Hori Y. Social Contribution of Ophthalmologists through Dry Eye Research. Toho J Med. 5(1):1-3, 2019
  9. Chiba T, Sakuma K, Komatsu T, Cao X, Aimoto M, Nagasawa Y, Shimizu K, Takahashi M, Hori Y, Shirai K, Takahara A. Physiological role of nitric oxide for regulation of arterial stiffness in anesthetized rabbits. J Pharmacol Sci 139(1):42-45, 2019
  10. 堀 裕一. オキュラーサーフェス疾患における基礎と臨床. 眼薬理33(1):17-20, 2019


眼疾患先端治療学講座(寄付講座)の近年の論文
  1. Todokoro D, Suzuki T, Tamura T, Makimura K, Yamaguchi H, Inagaki K, Akiyama H. Efficacy of Luliconazole Against Broad-Range Filamentous Fungi Including Fusarium solani Species Complex Causing Fungal Keratitis. Cornea. 38:238-242, 2019.
  2. Arita R, Mizoguchi T, Kawashima M, Fukuoka S, Koh S, Shirakawa R, Suzuki T, Morishige N.Meibomian Gland Dysfunction and Dry Eye Are Similar but Different Based on a Population-Based Study: The Hirado-Takushima Study in Japan. Am J Ophthalmol. 207:410-418, 2019
  3. Kishimoto T, Ishida W, Fukuda K, Nakajima I, Suzuki T, Uchiyama J, Matsuzaki S, Todokoro D, Daibata M, Fukushima A.Therapeutic Effects of Intravitreously Administered Bacteriophage in a Mouse Model of Endophthalmitis Caused by Vancomycin-Sensitive or -Resistant Enterococcus faecalis. Antimicrob Agents Chemother. 63(11). pii: e01088-19, 2019.

教育の概要

学部

1.総論(眼の構造と機能)2.屈折、調節検査とその異常3.超音波検査、電気生理検査、色覚、光覚検査とその異常4.細隙灯検査とその異常5.水晶体6.角膜とアイバンク7.視野検査とその異常8.緑内障9.斜視、弱視、両眼視機能、小児眼科10.眼底検査、蛍光眼底造影、光凝固11.網膜12.ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)13.神経眼科(1)感覚系(瞳孔、視神経、視路)14.神経眼科(2)運動系(眼球運動)15.眼瞼、結膜、涙器16.全身病と眼17.眼外傷18.眼窩、腫瘍
3年次13コマで授業を行う。

大学院

角膜及び網膜(眼底循環)に分けて基礎研究、臨床研究、疫学研究をベースに研究を行います。角膜分野ではコンタクトレンズ装用が角膜に与える影響についての研究、眼表面ムチンの発現および機能に関する研究を行います。眼底循環分野ではレーザースペックル・フローグラフィーを用いて動物実験、疫学研究を主体に行います。動物実験では急性実験を立案しています。具体的にはアドレナリン等の血管作動性物質が眼底循環に与える影響を家兎で研究します。本結果をベースに種々の薬剤が全身血液動態、眼血流動態に与える影響を学びます。実験は東邦大学薬学部、薬物治療学高原章教授の御協力のもと進める予定です。また、疫学研究に関してはJCHO東京蒲田医療センター健診センター様の御協力のもと人間ドック受診の方を対象に大規模な眼底血流のデータベース構築を行います。得られたデータは国内外の学会で積極的に発表し、最終的には英語学術論文に投稿します。

診療の概要

平成26年4月より前任の杤久保哲男教授から引きつぎ、堀 裕一(ほりゆういち)教授が眼科学講座(大森)を主宰しております。東邦大学医療センター大森病院眼科は、東京城南地区の眼科医療の中核として発展してまいりました。我々は、国民の視覚を守り、地域に貢献する、「皆様に愛される眼科」を目指して参りたいと思っております。診療におきましては、白内障、緑内障、網膜硝子体疾患、角膜疾患、小児眼科疾患、外眼部疾患、涙道疾患、神経眼科など、眼科にかかわるすべての疾患に対応させていただいております。当科では、最新の手術機械・技術による質の高い眼科医療を提供したいと考えており、スタッフ一同日々研鑽しております。堀教授の専門分野は角膜疾患で特に角膜移植を得意としております。移植医療により一人でも多くの失明患者を救いたいと考えております。また、糖尿病網膜症や網膜剥離などの後眼部疾患(網膜硝子体疾患)、斜視弱視や未熟児網膜症(小児眼科)などの専門チームを設けスタッフが一丸となって新しい知識や治療法、臨床に基づいた研究を推進しております。そして当科では、未来の国民の視覚を守る若い眼科医の教育にも力を入れております。高い臨床能力をもち、患者様やそのご家族に心配りのできる「総合力をもった医師」の育成を積極的に行っていきたいと考えます。

その他

社会貢献

2019年度は、以下のメディアに堀 裕一教授の記事およびコメントが掲載された。
〇新聞
日刊ゲンダイ:角膜潰瘍でトラブル抱える人が急増(2019年11月20日)
産経新聞:近ごろ都に流行るもの 酷使時代のアイケア(2020年1月13日)
日経MJ:眼科医6割が「ドライアイ増加」と実感(2020年2月5日)

〇雑誌
毎日が発見「角膜上皮障害」(2020年3月号)

〇Webニュース
Yahoo!ニュース、他:スマホで角膜損傷トラブル(2019年11月20日)
プレジデントWOMAN、他:ドライアイの放置で角膜が傷つくリスク(2019年12月4日)
OTONA SALONE、他:「老眼」について(2020年1月13日)
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151