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心身医学講座(大森)

所属教員名

端詰 勝敬 / 教 授
竹内 武昭 / 准教授
橋本 和明 / 講 師

運営責任者

講座の概要

我々は全国でも数少ない心身医学を専門とした大学医学部の講座として、臨床・教育・研究における多面的な取り組みを行っております。第2内科の自律神経班を前身としており、故阿部達夫先生らのご尽力により1980年10月に心療内科として独立を果たしました。初代教授である筒井末春先生らのご努力の甲斐あり、1991年5月より心身医学講座への昇格を果たしております。1999年からは坪井康次先生、中野弘一先生が牽引役となって心身医学の一層の発展に努められました。

2015年より現在の講座責任者である端詰勝敬が教授に就任し、また2016年には竹内武昭准教授を迎え、新体制で大学における心身医学講座の役割というものを改めて問い直し、臨床・教育・研究における一層の成果を挙げるべく研鑽を積んでおります。臨床研究および論文発表の推進、大学院生教育の拡充、学部生教育の刷新など積極的な取り組みを行っています。

研究の概要

我々の講座では主に摂食障害や一次性頭痛、うつ病に関連した調査や研究を行っています。特に実臨床場面での活用を視野に入れた調査や研究を積極的に進めています。また本学が掲げる「良き臨床医の育成」のため、医学教育における質の向上に関する調査も行っています。


  1. 中枢感作に影響する要因‐高齢者に対する前向き研究
    中枢性感作は、慢性疼痛や繊維筋痛症などの疼痛性疾患以外にもストレス関連疾患などの病態に関与することが知られており、当科では2018年より地域高齢者を対象に中枢性感作に関与する要因として心理社会的要因および身体的要因について検討を行い、これまで、中枢性感作と対人交流の希薄さに関連があることを見出している。現在は横断研究に引き続いた前向き研究をおこなっている。
  2. 非定型と脳過敏症候群うつ病の関連についての検討
     非定型うつ病は環境や対人関係への過敏性を特徴とするうつ病であり、近年増加しているうつ病の特徴を持つと言われる。一方脳過敏症候群という脳の過敏性を特徴とする症候群が近年増加している。両疾患は過敏性という同様の特徴を持ち、その関連性が示唆されるが研究が進んでいない分野である。当科では内科面と心理面の両面から関連性について研究している。
  3. 心身症に対するリラクゼーションとベンゾジアゼピン使用量減少との関連
    MUSなどの心身症では、症状の緩和を目的にベンゾジアゼピン系薬剤を使用する場合がありますが、依存性が問題となる場合があります。ガイドライン等もありますが、実際には10年間で使用率は大きな変化がないという海外データもあります。東邦大学心療内科では、外来で心身症に対する非薬物療法としてリラクセーション療法を導入しており、臨床症状への有効性やベンゾジアゼピンの減薬に有用であるかどうかの臨床研究を行っております。
  4. 感覚過敏性とめまい症状の関連についての検討
    機能性めまいは近年注目されている機能性疾患であり、心身症としての側面を多くもつ疾患概念です。心理的な要因が関与することが近年の研究で知られるようになりましたが、そのメカニズムについては未だ明らかではありません。本研究は、東邦大学医学部柳瀬武司奨学寄付基金による支援を受け、不安・抑うつ、睡眠、中枢性感作など多角的視点から、機能性めまいの症状や頻度との関連性を検討する臨床研究を実施しております。
  5. 摂食障害における情動知能の特徴
    摂食障害は死亡率が10%にも及び、現代でも治療が難しい疾患の1つです。厚生労働省の調査では、BMIの低さや社会適応力などが予後不良因子として報告されています。社会適応力は、人生を豊かに生きるための重要な能力として情動知能の関連が示唆されています。東邦大学心療内科では以前から情動知能の研究を行っており、摂食障害の臨床的な特徴を検討し、治療の糸口を探索しております。現在健康な方のボランティアも募集しておりますので、詳しくはお問い合わせください。
  6. 医学生に動画とロールプレイを用いた指導による共感度向上を検討した研究
    医学生の共感度は学年を経ることで低下することが知られている。そこで実習中の医学生に共感を深めるような動画を用いて、実際の患者と接する前に積極的な医療面接の教育を行うことで共感度が向上しにくい学生でも共感度を向上させることが出来ないかを検討する。
  7. 心身症に対する自律訓練法の効果についての探索的研究
    自律訓練法は心療内科を代表する心理療法のひとつですが、最新の研究成果報告が少なく治療者の経験に頼るところが大きくなっています。本研究では心身症の患者に対して自律訓練法を実施し、末梢皮膚温・心拍数・動脈血酸素飽和度に加え、HAD・TAS-20・SSASなどの心理検査においても継時的な変化を測定して、客観的に自律訓練法の効果を検討することを目的としています。
  8. 休職者における自我状態と社会適応能力の関連についての検討
    うつ病・うつ状態で休職する人は増加傾向にありますが、薬物療法によりうつ症状が改善したとしても,復職に至らないことは少なくありません。復職にはうつ症状の改善だけではなく,社会適応能力も重要であると考えられています。そのため、社会適応能力と自我状態との関連を検討することで、休職者の復職に向けた非薬物療法の1つとして交流分析的手法を用いたアプローチに繋がることを目指しています。

代表論文

  1. Takeuchi T, Hashimoto K, Koyama A, et al. Sex differences in the association between smoking and central sensitization: A cross-sectional study. Tob Induc Dis. 2023;21:172.
  2. Tanemoto Y, Yamada U, Nakayama M, et al. Association of illness perception and alexithymia with fatigue in hemodialysis recipients: a single-center, cross-sectional study. Sci Rep. 2023;13(1):16592.
  3. Hashimoto K, Takeuchi T, Hiiragi M, et al. Utility and optimal cut-off point of the Somatic Symptom Scale-8 for central sensitization syndrome among outpatients with somatic symptoms and related disorders. Biopsychosoc Med. 2022;16(1):24.
  4. Hashimoto K, Takeuchi T, Murasaki M, et al. Psychosomatic symptoms related to exacerbation of fatigue in patients with medically unexplained symptoms. J Gen Fam Med. 2022;24(1):24-29.
  5. Hashimoto K, Takeuchi T, Ueno T, et al. Effect of central sensitization on dizziness-related symptoms of persistent postural-perceptual dizziness. Biopsychosoc Med. 2022;16(1):7.
  6. Hashimoto K, Takeuchi T, Koyama A, et al. Effect of relaxation therapy on benzodiazepine use in patients with medically unexplained symptoms. Biopsychosoc Med. 2020;14:13.
  7. Nakao M, Takeuchi T. Alexithymia and Somatosensory Amplification Link Perceived Psychosocial Stress and Somatic Symptoms in Outpatients with Psychosomatic Illness. J Clin Med. 2018;7(5):112.
  8. Takeuchi T, Takenoshita S, Taka F, et al. The Relationship between Psychotropic Drug Use and Suicidal Behavior in Japan: Japanese Adverse Drug Event Report. Pharmacopsychiatry. 2017;50(2):69-73.
  9. Nakamura Y, Takeuchi T, Hashimoto K, et al. Clinical features of outpatients with somatization symptoms treated at a Japanese psychosomatic medicine clinic. Biopsychosoc Med. 2017;11:16.
  10. Hashizume M, Hachisu M, Yoshida H, et al. Serum brain-derived neurotrophic factor level in elderly women depression: a community-based study. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2015;56:109-16.

教育の概要

学部

心理社会的ストレスは種々の身体疾患や精神疾患の発症の契機となり、また症状の増悪寛解、治療予後を左右する要因となることもあります。患者を一症例として捉えるのではなく病気を抱えた人格として尊重し、より包括的な診断と治療を含むマネージメントを行えるようになることを目指します。身体・心理・社会といった側面から患者を評価し、理解したうえで各々の相互作用について理解することの重要性を学びます。

学部生が臨床実習の段階で好ましい治療者患者関係を築けるようになること、個々の患者の抱える心理社会的な問題の解決のために必要となる治療戦略を発案できるようになること、他の医療スタッフと協力して解決にあたれるようになること、これら将来医師として求められる基礎的な能力を身につけることが出来るよう指導を行います。

4年生では心身医学の基礎的な考え方、心理的要因が身体疾患におよぼす影響、精神疾患に随伴する身体症状などについて学びます。5年生になると臨床実習で実際の患者に触れながら知識を深めていきます。また臨床実習と併せて摂食障害や心理検査などついての小講義も行っています。6年生(選択実習)では1ヶ月という期間を生かして患者と深く関わることにより、知識だけでなく実臨床における傾聴や共感などの対話技術を学ぶことが出来るよう指導を行っています。

大学院

心身症を中心にFunctional somatic syndromes及びMedically unexplained symptomsなどに対して、心と体の調和と、その相互作用(心身相関)に重点を置いた臨床的・研究的な教育を行っています。以下の教育目標を設定しています。

  1. 心身医学的な診断・治療技術の獲得
    内科認定医及び総合内科専門医を前提とした心療内科専門医の資格取得を目指します。総合内科医としての基礎的知識と技能に加えて、心療内科医としての診断・治療技術を学びます。具体的には心療内科的面接法、リラクセーション技法、バイオフィードバック療法、自律訓練法、精神分析療法、認知行動療法などがあります。週一回の全体会議と班会議を中心に専門的な技術の獲得を目指します。
  2. 国際的論文の作成能力及び公的研究費の獲得
    研究計画、実施、論文作成の過程を経て、国際誌に論文の発表が出来るようにします。週1回の研究会で生物統計学、疫学、心身医学、行動医学などの基礎を勉強しながら、実際に研究する過程を通して能力の獲得を目指します。
  3. 国際性の獲得
    心身医学の臨床・研究能力を英語により国内外に発信出来るようにします。研究会と生物統計学ではハーバード大学大学院の資料を中心に個別に学会予行や論文作成指導を行っています。


(上記の教育目標は強制的なものではありません、個人の方向性に応じて柔軟に対応しています)

診療の概要

当科では過敏性腸症候群や一次性頭痛などの「心身症」、摂食障害、パニック症などの診療を行っています。心身症とは「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害の認められる病態をいう。(日本心身医学会)」と定義されています。簡単に言うと「身体の病気がありながら、その発症や経過に心理的なストレスや環境が密接にかかわっているもの」を指します。

心療内科のことを「“こころ”の病気を診断・治療する診療科」と思われている方も多いようです。しかし基本的には「心身症」と言われる、身体疾患や身体症状の発症や経過にストレスなど心理社会的要因が密接に関与している方の診療が主体となります。大学病院である当院では、身体と精神の両面から的確な診断・治療を行うための体制が整っているのはもちろん、内科的な病気でより専門的な診療が必要な患者さんに対しては該当する診療科をご紹介するなど、スムーズに適切な対応が出来ることが大きな特長のひとつとなっています。

また、当科には「他の病院やクリニックではこれといった病気は見つからなかったけれど、身体の不調が続いていてつらい」といった悩みを抱えた方々も多く受診されます。初診時には十分に問診の時間を設けてお話をじっくり丁寧に伺ったうえで、身体面の詳細な診察や、精神面に対するきめ細かなフォローに努めています。

その他

社会貢献

  1. 小学校におけるストレスマネジメント出張授業
    近隣の小学校からの依頼を受け、小学校6年生を対象としたストレスマネジメントの出張授業を行っています。体育会に6年生全員が集合し、模擬症例を使いながらストレスについて学んだり、リラクセーション療法の体験を行ったりしています。
  2. 大田区職員研修
    大田区からの依頼を受けて区職員に対してメンタルヘルス研修を行っています。

学会活動

主催学会(5年以内/研究会は除く)
日本交流分析学会第46回学術大会(2021年6月)
日本自律訓練学会第45回大会(2022年10月)
第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(2023年7月)
第134回日本心身医学会関東地方会(2024年1月)
第28回日本心療内科学会総会・学術大会(2024年12月予定)

当科関連学会(国内)
日本心身医学会、日本心療内科学会、日本内科学会、日本女性心身医学会、バイオフィードバック学会、日本摂食障害学会、日本うつ病学会、日本不安障害学会、日本行動医学会、日本交流分析学会、日本心理医療諸学会連合会大会、日本ストレス学会、日本自律訓練学会

当科関連学会(国際)
国際心身医学会、国際行動医学会、世界女性心身医学会
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151