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解剖学講座微細形態学分野

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運営責任者

講座概要

 解剖学講座微細形態学分野は、教育においては臓器別ユニットの組織学と発生学の講義および実習を担当しており、担当学年は1年生と2年生になります。生涯に渡りアクティブ・ラーニングが要求されるとともに、限られた講義・実習時間の前においては、敢えて“教え込まない教育”と“考える教育”を常に念頭に置きながら教育に当たっています。換言すれば、直接教授できる知識は求められる履修内容の骨格を成すに過ぎず、人体の構造と機能に関する知識を有機的に理解、修得するためには自学自修が前提であり、必須であることを肝に銘じて下さい。研究においては、様々な個体の行動を制御している神経回路の理解と解明に向けて精励しています。例えば、私たちは毎日食事を摂り、夜になったら眠ります。食事も眠りも健やかに生きていくためには欠かせないものですが、強いストレスがかかったり、うつ病になると食欲がなくなり眠れなくなります。このように、情動やストレス反応と摂食、睡眠は神経系を通じてお互いに影響しあっています。脳は神経細胞同士が情報のやり取りをする場ですが、なかでも大脳皮質、視床、視床下部、脳幹部にある特定の神経細胞同士のネットワークが様々な行動を制御、調節していることがわかっています。また、行動の基礎的機能となっている記憶、認知、判断、意思決定等の高次脳機能の神経回路についても統合的解析を進めています。このような神経回路研究に形態学的手法や分子生物学的手法等を駆使することによって、摂食、睡眠および高次脳機能が関わる神経基盤の包括的究明に取り組んでいます。

研究の概要

 広義の本能行動を制御する神経科学的基盤を解明することが研究テーマです。具体的には、睡眠覚醒、摂食、エネルギー代謝、情動行動、養育行動、性行動、攻撃行動といった、ヒトの行動や疾患に敷衍できる行動を研究対象としています。主に、マウスをモデル動物として用いており、さまざまな遺伝子改変マウスへのアデノ随伴ウイルスベクターの局所投与による機能解剖学的アプローチを中心としています。
 日々進展する新しい研究手法を取り入れられるよう、筑波大学、自治医大などとの共同研究を活発に推進しています(Funato et al. Nature 2016)。また、基礎医学研究分野でいち早くメタアナリシスを取り入れた研究(Takase et al. PLOS One 2014)も行っています。

  1. 大脳皮質-視床神経ネットワークへのモノアミンやアセチルコリン入力の形態学的検討
     視床は嗅覚以外の感覚情報を視床皮質路として大脳皮質に送る中継核です。大脳皮質ではそれらの情報を統合してより高次の情報処理がなされています。視床と大脳皮質間の神経結合は下図で示すように視床皮質路に加え、大脳皮質から視床へ情報を伝える皮質視床路も存在します。さらに、視床網様核、視床内および大脳皮質内の抑制性神経細胞が介在し、複雑な神経回路が構築されています。これらの神経回路の神経活性を修飾するモデュレーターとしてアセチルコリンとドパミンが特に重要であると考えられています。
     我々は細胞内および細胞外トレーサ注入法を用いた神経回路網の解析、および免疫多重染色法を用いて神経伝達物質や受容体などの神経関連物質の各神経要素における局在分布の解析を行っています(Kuroda et al. JCN 2004; Oda et al Brain Res 2010; Oda et al. JCN 2014)。さらに、遺伝子改変マウスへのアデノ随伴ウイルスベクター局所投与による、遺伝解剖学的研究も行っています。これらの研究により、視床-大脳皮質間の神経回路のみならず、大脳皮質における高次情報処理における神経活性の制御メカニズムの解明を目指しています。
  1. 生得的社会行動を制御する視索前野の機能解剖学
    内側視索前野は性行動や養育行動などの本能行動に重要な脳領域であり、内分泌情報や環境情報、他個体の情報などの社会的情報を統合し、下流の複数の情動に関わる神経領域を制御すること、性行動や養育行動、攻撃行動などの生得的な社会行動を制御する中枢であることが古典的な破壊実験や投射解析から示唆されてきました。また、社会行動に限らず、睡眠や摂食、体温調節などの多岐に渡る生命活動の根源的機能を担う領域としても知られています。しかし、その生体機能における多くの示唆がある一方で、その形態的・機能的複雑性が研究の障害となり、神経回路レベルでの役割は未解明な部分が多く残されています。
    我々は、これまで蓄積してきた組織学的なデータを基盤として遺伝子工学的な手法を用い、内側視索前野の機能検討を行っています(Tsuneoka et al. JCN 2013; Tsuneoka et al EMBO 2015)。
  1. 「親と子の絆」の神経科学
    私たち人間も含めすべての哺乳類にとって、親子の絆は生きていく上でとても大切です。視覚や聴覚、嗅覚、皮膚感覚など様々な感覚を使って、親と子は絶えず情報交換しながら絆を深めていきます。親子関係がうまくいくように努力しているのは親だけではありません。実は子どもも色々な働きかけをしています。例えば、よく親は乳児を抱っこして歩きます。この時の乳児の変化を調べた結果、泣く量・動き・心拍数の低下を伴う鎮静反応が起こることが明らかになりました(Yoshida et al., Curr Biol 2013)。同様の鎮静反応は、親マウスに運ばれる時の仔マウスでも起こることが分かりました(写真)(Yoshida et al., Font Zool 2013)。子(仔)はおとなしくなることで、親の移動に協力していると考えられます。子(仔)から親への様々な働きかけが、脳内でどのように制御されているのかはまだよく分かっていません。我々は、主に実験室マウスを用いて、幼若個体の行動を遺伝子レベルで解析しています。

代表論文

  1. Hiromasa Funato*, Chika Miyoshi, Tomoyuki Fujiyama, Takeshi Kanda, Makito Sato, Zhiqiang Wang, Jing Ma, Shin Nakane, Jun Tomita, Aya Ikkyu, Miyo Kakizaki, Noriko Hotta-Hirashima, Satomi Kanno, Haruna Komiya, Fuyuki Asano, Takato Honda, Staci J. Kim, Kanako Harano, Hiroki Muramoto, Toshiya Yonezawa, Seiya Mizuno, Shinichi Miyazaki, Linzi Connor, Vivek Kumar, Ikuo Miura, Tomohiro Suzuki, Atsushi Watanabe, Manabu Abe, Fumihiro Sugiyama, Satoru Takahashi, Kenji Sakimura, Yu Hayashi, Qinghua Liu, Kazuhiko Kume, Shigeharu Wakana, Joseph S Takahashi, Masashi Yanagisawa*. Forward-genetics analysis of sleep in randomly mutagenized mice. Nature 539:378-383, 2016 (* corresponding author)
  2. Mohammad Sarowar Hossain, Fuyuki Asano, Tomoyuki Fujiyama, Chika Miyoshi, Makito Sato, Aya Ikkyu, Satomi Kanno, Noriko Hotta, Miyo Kakizaki, Takato Honda, Staci J. Kim, Haruna Komiya, Ikuo Miura, Tomohiro Suzuki, Kimio Kobayashi, Hideki Kaneda, Vivek Kumar, Joseph S. Takahashi, Shigeharu Wakana, Hiromasa Funato*, Masashi Yanagisawa*. Identification of mutations through dominant screening for obesity using C57BL/6 substrains. Scientific Reports 6:32453, 2016 (*corresponding author)
  3. Kenkichi Takase, Yousuke Tsuneoka, Satoko Oda, Masaru Kuroda, Hiromasa Funato. High-fat diet feeding alters olfactory-, social-, and reward-related behaviors of mice independent of obesity. Obesity 24: 886-894, 2016 (*corresponding author)
  4. Yousuke Tsuneoka, Kenichi Tokita, Chihiro Yoshihara, Taiju Amano, Gianluca Esposito, Arthur J Huang, Lily MY Yu, Yuri Odaka, Kazutaka Shinozuka, Thomas J McHugh, Kumi O Kuroda. Distinct preoptic-BST nuclei dissociate paternal and infanticidal behavior in mice. EMBO Journal 34: 2652-2670, 2015
  5. Satoko Oda*, Hiromasa Funato, Fumi Sato, Satomi Adachi-Akahane, Masanori Ito, Kenkichi Takase, Masaru Kuroda. A subset of thalamocortical projections to the retrosplenial cortex possesses two vesicular glutamate transporter isoforms, VGluT1 and VGluT2, in axon terminals and somata. Journal of Comparative Neurology 522: 2089–2106, 2014 (*corresponding author)
  6. Gianluca Esposito, Sachine Yoshida*, Ryuko Ohnishi, Yousuke Tsuneoka, Maria del Carmen Rostagno, Susumu Yokota, Shota Okabe, Kazusaku Kamiya, Mikio Hoshino, Masaki Shimizu, Paola Venuti, Takafumi Kikusui, Tadafumi Kato, Kumi O Kuroda. Infant calming responses during maternal carrying in humans and mice. Current Biology 23, 739-745, 2013 (* co-first author)
  7. Yousuke Tsuneoka, Teppo Maruyama, Sachine Yoshida, Katsuhiko Nishimori, Tadafumi Kato, Michael Numan, Kumi O Kuroda. Functional, anatomical, and neurochemical differentiation of medial preoptic area subregions in relation to maternal behavior in the mouse. Journal of Comparative Neurology 521: 1633-1663, 2013
  8. Hiromasa Funato, Makito Sato, Christopher M. Sinton, Laurent Gautron, S. Clay Williams, Amber Skach, Joel K. Elmquist, Arthur I. Skoultchi, Masashi Yanagisawa. Loss of Goosecoid-like and DiGeorge syndrome critical region 14 in interpeduncular nucleus results in altered regulation of rapid eye movement sleep. Proc Natl Acad Sci USA 107:18155-18160, 2010
  9. Hiromasa Funato, Allen L. Tsai, Jon T. Willie, Yasushi Kisanuki, S. Clay Williams, Takeshi Sakurai, Masashi Yanagisawa. Enhanced orexin receptor-2 signaling prevents diet-induced obesity and improves leptin sensitivity. Cell Metabolism 9:64-76, 2009
  10. Toshio Matsubara, *Hiromasa Funato, Ayumi Kobayashi, Masaaki Nobumoto, Yoshifumi Watanabe. Reduced glucocorticoid receptor a expression in mood disorder patients and first-degree relatives. Biological Psychiatry 59, 689-695, 2006 (*co-first author)

教育の概要

学部

対象学年:1年次
領域サブ領域ユニット
生体の構造1生体の構造1-①組織学総論 (Ⅰ期8時限)
生体の構造1-②運動器・末梢神経系(Ⅱ期2時限)
呼吸・循環器系(Ⅱ期6時限)
生体の構造1-③消化器系(Ⅱ期4時限)
内分泌・泌尿生殖器系(Ⅲ期9時限) 
生体の構造1実習生体の構造1実習Ⅲ(組織学総論実習)
(Ⅰ期18時限) 
生体の構造1実習Ⅳ(組織学各論実習Ⅰ)
(Ⅱ~Ⅲ期30時限)
対象学年:2年次
領域サブ領域ユニット
生体の構造2生体の構造2感覚器・中枢神経系(Ⅰ期8時限)
生体の構造2実習生体の構造2実習Ⅱ(組織学各論実習Ⅱ)
(Ⅰ期9時限)
医学の道を歩む者にとって、人体の構造と機能に関する知識を修めることは、医学・医療の学識基盤を築く上で最重要かつ必須の要件です。微細形態学分野では、学部教育において組織学と発生学を担当していますが、もはや単なる形を追求する学問分野ではなく、形態と機能を密接不可分にとらえ、生命機能の解明に基本的な解答を見出すための領域という認識に立って教育に与っています。従って、形態学的知識はもとより、生理学的、生化学的、さらには分子生物学的素養も要求されることを自覚して下さい。学体系の教育もしくは器官系や臓器別の統合型学習においても、人体の生命機能維持の理解や病態を的確に把握するためには、先ずは正常構造の理解と修得が第一義であり、この修得なしには生理機能はもとより、疾患や治療などの層状的かつ複層的な臨床医学の知識を有機的に身に付けることは不可能です。
 具体的な教育内容としては、上記の表に示すように、1・2年次に各ユニットに関する正常組織構造および発生・分化について学びます。さらに、実習を通じて、人体は上皮、支持、筋、神経の4大組織をもとに各器官は構築されており、その器官の三次元構造を細胞・組織レベルで体得、理解してもらうことを目指しています。同時に、実習は人間の尊厳および死について熟思する絶好の機会でもあり、人間性豊かな医師に通底する高邁な人生観や倫理観、そして死生観が醸成、確立されることを強く期待しています。
一方、将来、皆さんが医師になろうと研究者になろうと、生涯にわたって日常の中に疑問を見出し、それと謙虚に対峙する探求心、即ち、リサーチ・マインドが求められます。解剖学領域の研究面においては、単に形態学的検索に終始するだけの研究ではとうに通用しなくなっています。少なくとも複数の実験手法を組み合わせたり、日々開発される遺伝子組換え技術を駆使することによって生命活動を分子レベルで論理的に解析することも当たり前の時代となっています。このように、現在の医学研究は、より分子生物学的方向へ傾斜しつつありますが、巨視的観点から究明されなくてはならない多くの問題が未解決のまま残されていることも忘れてはなりません。分子レベルで得られた研究の成果は、最終的には、分子の巨大な集合体としての細胞、器官、または個体の構造との関連において評価することのできる研究者・医師を求めています。このため、皆さんの中から、生命現象を分子、細胞、組織、個体という各レベルを結び付ける統合的理解を目指すバイオサイエンスに積極的に取り組む人材の育成、輩出にも尽力したいと思っています。

大学院

医科学専攻修士課程
共通必修 医科学研究序論(2単位)(分担)
共通選択 微細構造機能学特論(2単位)
専攻科目 高次機能制御系・微細構造機能学(演習4単位、実習12単位)

医学専攻博士課程
共通選択 生体構造コース(1単位)(分担)
専攻科目 高次機能制御系・微細構造機能学 微細構造機能学特論Ⅰ・Ⅱ(4単位)
     演習(12単位)、実習(4単位)

その他

社会貢献

東邦大学医学部看護学部共催「小学生夏の医学校」において、基礎医学実習「脳を科学する」を担当しています。顕微鏡観察、脳波体験、錯視体験などを通じて、脳の構造と機能を理解するプログラム内容です。

学会活動

日本解剖学会、日本神経科学学会を中心にシンポジウムを開催しています。
  • 第122回日本解剖学会総会学術集会・シンポジウム「個と絆を制御する神経・内分泌ネットワークの探求」オーガナイザー・座長およびシンポジスト(2017年3月)
  • 第121回日本解剖学会総会学術集会・シンポジウム「本能行動制御の機能的解剖学とゲノム編集技術の応用」オーガナイザー・座長およびシンポジスト(2016年3月)
  • 第120回日本解剖学会総会学術集会・第92回生理学会合同大会 シンポジウム「睡眠研究のフロンティア」オーガナイザー・座長およびシンポジスト(2015年3月)
その他の主な参加学会。
日本生理学会、日本分子生物学会、日本精神神経学会、日本睡眠学会、日本感性工学会大会、日本行動神経内分泌研究会、Society of Neuroscience
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151