医学部

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生化学講座生化学分野

所属教員名

中野 裕康 / 教 授
飯野 早苗 / 講 師
土屋 勇一 / 講 師
村井 晋  / 助 教
出口 裕  / 助 教
中林 修  / 助 教

運営責任者

講座の概要

当教室の歴史は古く、大正15年に帝国女子医学専門学校の医科学教室に高木逸雄先生が初代教授として赴任されたところから始まります。その後2代目 藤井暢三教授、3代目 高田蒔教授、以降は二人教授の時代(浅田敏雄教授、柳澤勇教授、天野久夫教授)が前任の山下茂教授まで続いていました。浅田敏雄先生は教授退官後に、東邦大学学長や日本私立医科大学協会長を歴任された大変ご高名な先生でした。8代目教授として中野が2014年4月より生化学講座に赴任し、現在に至っております。その後2015年4月から生化学講座/生化学分野と生化学講座/病態生化学分野の2分野体制に移行しております。

研究の概要

私たちの研究室では、細胞死や酸化ストレスにより誘導される生体応答の解析を中心に研究を行っています。細胞死や酸化ストレスは生体の恒常性維持に関与すると同時に、その制御異常は様々な病態の形成に関与していることが明らかにされてきています。私たちの教室では、分子生物学的、細胞生物学的、生化学的な手法はもちろんですが、形態学的なアプローチ(光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡などによる解析)を重視して研究を展開しています。私たちの樹立した様々な病態モデルマウスを解析することで、ヒトの病態の本質に迫る研究や、慢性炎症性疾患やがんなどの疾患の新たな治療法の開発を目指したいと思っています。

  1. 組織特異的cFLIP欠損マウスの解析
    最近の研究では計画的細胞死(特定の遺伝子の機能により制御された細胞死)の中にはアポトーシスだけではなく、ネクロプトーシス、パイロトーシスやフェロプトーシスなどの細胞死が存在することが分子レベルで明らかにされ、心筋梗塞や脳梗塞時の傷害や、ウイルス感染の防御に関連していることがわかってきました(詳細はラボのホームページのエッセイ参照, http://tohobiochemi.jp/essay/index.html)。私達は、炎症や細胞生存に必須の転写因子であるNF-κBによる細胞死の抑制のメカニズムを解析する過程で、NF-κBによる細胞死抑制機能は主にcellular FLICE-inhibitory protein (cFLIP)によっていることを見出しました (Sakon et al, EMBO J 2003; Nakajima et al, EMBO 2006; Nakajima et al, Oncogene 2008)。そこでこの遺伝子を腸上皮細胞や肝細胞だけで特異的に発現を無くしたマウスを作製し、その表現型を解析しました。それぞれの組織特異的なcFLIP欠損マウスは生後1〜2日以内にほぼ全個体が死亡するということが判明しました。さらにこの時腸上皮細胞や肝細胞にはアポトーシスだけではなく、ネクロプトーシスが誘導されていることを電子顕微鏡の観察により明らかにしました。このことからcFLIPと呼ばれる遺伝子はアポトーシスやネクロプトーシスをブロックすることで、腸管や肝臓の恒常性維持に必須の役割を果たしていることが明らかになりました(Piao et al, Sci Signal 2012)。
    その後肝細胞でcFLIPの発現の低下したマウスを用いて、肝死細胞の除去に関与する細胞の検討を行いました。予想外なことに肝臓に常在するクッパー細胞を除去しても肝死細胞の除去には何ら影響を与えなかったかったものの、骨髄から浸潤してくる単球や好中球を除去したところ、肝炎が劇症化し、アポトーシスに陥った肝細胞から大量のヒストンH3が血中に放出され、さらに放出されたヒストンが血管内皮障害に関与しているという現象を見出しました。この研究はヒトの劇症肝炎などでも血中に大量のヒストンH3が放出されている可能性を示しており、ヒストンH3の毒性を中和するような方法が、劇症肝炎の新しい治療法となる可能性を示しています(Piao et al, Hepatology 2017; 2016年10月28日プレスリリース, http://www.toho-u.ac.jp/press/2016_index/20161028-727.html)。
    また、表皮特異的なcFLIP欠損マウスの解析から、cFLIPを表皮で欠損させると子宮内で致死となること、その致死はI型のTNFの受容体の欠損マウスとの二重欠損マウスを作成することで、レスキューされることを私たちは見出しています。さらにcFLIPs; TNFR1二重欠損マウスは生後すぐに重篤な皮膚炎を発症し、全個体が10日以内に死亡することから、現在皮膚炎発症のメカニズムを解析しているところです(Piao et al, 論文準備中)。
  2. cFLIPsトランスジェニックマウスの解析
    ヒトcFLIPをコードする遺伝子(正式名称はCFLAR)はcFLIPLとcFLIPsの2種類のタンパク質を産生しますが、cFLIPLはアポトーシスもネクロプトーシスも抑制するのに対し、cFLIPsはアポトーシスを抑制するものの、ネクロプトーシスを促進することが他のグループより報告されました。そこで、in vivoにおけるcFLIPsの役割を明らかにするために、cFLIPsを過剰に発現するトランスジェニック(Tg)マウスを樹立しました。cFLIPs Tgマウスは胎児期に重篤な小腸炎を発症し、小腸の上皮細胞は主にネクロプトーシスではなく、アポトーシスで死んでいることを見出しました。cFLIPs Tgマウスの腸炎モデルの病態を解析することで、ヒト新生児腸炎を治療するための、新たな知見を得られるのではないかと考え解析しているところです。
  3. ネクロプトーシスのイメージングやcFLIPタンパク質の分解のメカニズムの解析
    以上のようなマウスを用いたin vivoでの解析以外にも、FRETを用いたネクロプトーシスのライブセルイメージングに世界で初めて成功しました(Murai et al, 論文準備中)。また、cFLIPタンパク質は不安定であり、プロテアソームにより分解されることが明らかとなっていますが、その分解に関与するE3リガーゼはこれまで、ITCHと呼ばれている酵素だと考えられてきました。しかし、我々はその他の酵素の存在も十分考えられることから、独自にその他の酵素の機能解析も進めています。
    私たちの教室では酸化ストレスによる生体応答制御機構についても研究をしていますが、それは病態生化学分野のホームページを参照してください。

代表論文

  1. Piao X, Yamazaki S, Komazawa-Sakon S, Miyake S, Nakabayashi O, Kurosawa T, Mikami T, Tanaka M, Van Rooijen N, Ohmuraya M, Oikawa A, Kojima Y, Kakuta S, Uchiyama Y, Tanaka M, Nakano H. Depletion of myeloid cells exacerbates hepatitis and induces an aberrant increase in histone H3 in mouse serum. Hepatology 2017;65:237-252.
  2. Nishina T, Deguchi Y, Miura R, Yamazaki S, Shinkai Y, Kojima Y, Okumura K, Kumagai Y, Nakano H. Critical contribution of NRF2 to an electrophile-induced interleukin-11 production. J Biol Chem 2017;292:205-216.
  3. Piao X, Komazawa-Sakon S, Nishina T, Koike M, Piao JH, Ehlken H, Kurihara H, Hara M, Van Rooijen N, Schutz G, Ohmuraya M, Uchiyama Y, Yagita H, Okumura K, He YW, Nakano H. c-FLIP Maintains Tissue Homeostasis by Preventing Apoptosis and Programmed Necrosis. Sci Signal 2012;5:ra93.
  4. Nishina T, Komazawa-Sakon S, Yanaka S, Piao X, Zheng DM, Piao JH, Kojima Y, Yamashina S, Sano E, Putoczki T, Doi T, Ueno T, Ezaki J, Ushio H, Ernst M, Tsumoto K, Okumura K, Nakano H. Interleukin-11 links oxidative stress and compensatory proliferation. Sci Signal 2012;5:ra5.
  5. Ushio H, Ueno T, Kojima Y, Komatsu M, Tanaka S, Yamamoto A, Ichimura Y, Ezaki J, Nishida K, Komazawa-Sakon S, Niyonsaba F, Ishii T, Yanagawa T, Kominami E, Ogawa H, Okumura K, Nakano H. Crucial role for autophagy in degranulation of mast cells. J Allergy Clin Immunol 2011;127:1267-1276 e1266.
  6. Tokunaga F, Nakagawa T, Nakahara M, Saeki Y, Taniguchi M, Sakata S, Tanaka K, Nakano H, Iwai K. SHARPIN is a component of the NF-kB-activating linear ubiquitin chain assembly complex. Nature 2011;471:633-636.
  7. Piao JH, Hasegawa M, Heissig B, Hattori K, Takeda K, Iwakura Y, Okumura K, Inohara N, Nakano H. Tumor Necrosis Factor Receptor-associated Factor (TRAF) 2 Controls Homeostasis of the Colon to Prevent Spontaneous Development of Murine Inflammatory Bowel Disease. J Biol Chem 2011;286:17879-17888.
  8. Nakajima A, Kojima Y, Nakayama M, Yagita H, Okumura K, Nakano H. Downregulation of c-FLIP promotes caspase-dependent JNK activation and reactive oxygen species accumulation in tumor cells. Oncogene 2008;27:76-84.
  9. Nakajima A, Komazawa-Sakon S, Takekawa M, Sasazuki T, Yeh WC, Yagita H, Okumura K, Nakano H. An antiapoptotic protein, c-FLIP(L), directly binds to MKK7 and inhibits the JNK pathway. EMBO J 2006;25:5549-5559.
  10. Sakon S, Xue X, Takekawa M, Sasazuki T, Okazaki T, Kojima Y, Piao JH, Yagita H, Okumura K, Doi T, Nakano H. NF-kB inhibits TNF-induced accumulation of ROS that mediate prolonged MAPK activation and necrotic cell death. EMBO J 2003;22:3898-3909.

教育の概要

学部

  1. 遺伝生化学Ⅰユニット(1年次 Ⅰ期 8コマ)
    遺伝学の基礎を学ぶとともに、その物質的基盤であるゲノム・遺伝子・染色体・核酸の構造を理解します。本ユニットは生物学研究室との分担により行われます。
  2. 代謝生化学Ⅰユニット(1年次 Ⅱ期 13コマ)
    糖質、脂質、アミノ酸およびタンパク質の化学構造、代謝、機能的意義について学んだ後、それらの化学反応を推進する機構について学びます。本ユニットは化学研究室との分担により行われます。
  3. 代謝生化学Ⅱユニット(1年次 Ⅲ期 6コマ)
    酵素の機能やヌクレオチド代謝を学び、糖・脂質・アミノ酸を含めた生体物質の代謝を統合的に理解します。
  4. 生体物質の科学実習(1年次 Ⅲ期 15コマ)
    糖代謝・脂質代謝・タンパク質の構造と機能の3項目について自ら実際に実験を行い、講義で習得した知識を確実なものにします。

大学院

生化学の基礎を学び、かつ最先端の分子生物学や細胞生物学を用いた研究成果を学びます。さらに生化学の主要研究テーマである細胞死制御機構や、細胞死により誘導される生体応答機構について詳しく学びます。生化学演習では最先端の論文を読み、内容をプレゼンテーションすることでより知識を深めます。これらの習得した知識や実験技術を駆使して、研究テーマを立案して実験を実行し、学会発表を行い、最終的には学位論文を作成します。

その他

社会貢献

  1. これまでの実績
    生化学講座では2015年、2016年と2年連続で日本学術振興会の「研究成果の社会還元・普及事業 ひらめきときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜KAKENHI」に採択され、全国から公募した中学生及び高校生を対象とした実習と授業を行いました。各年度ともに100名近くの応募があり、その中から20名の学生に参加していただきました。本年度は8月23日に開催し、ケーブルテレビJ:COM大田の取材を受け、ケーブルテレビのニュースで内容が放映されました。
  2. 2017年度以降の予定
    2017年度は第26回日本Cell Death学会を主催することになっており、7月23日の午後に大田区との共催で「細胞死と病気」というテーマで区民公開講座も企画しています。

学会活動

2017年7月24-25日に第26回日本Cell Death学会を大田区蒲田の産業会館PiOで開催する予定です。
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151