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生化学講座病態生化学分野

所属教員名

山﨑 創  / 准教授
仁科 隆史 / 助 教

運営責任者

中野 裕康 / 教 授
中野 裕康 / 教 授

中野 裕康 / 教 授(生化学講座)

講座の概要

生化学分野を参照。

研究の概要

感染や組織障害によって上皮のバリア機構が破綻すると、病原体成分や、自身の死細胞成分、および細胞死に伴って生じる活性酸素種(ROS)などがシグナルとなって周囲の細胞に働きかけ、サイトカインなどの液性因子の産生を誘導します。産生された液性因子は組織に存在する幹細胞や支持細胞に作用し組織修復を誘導します。この一連の変化は、がんや慢性炎症、および自己免疫疾患と密接に関連していると考えられています。私たちは細胞死や死細胞から放出される自己成分、酸化ストレスが、生体の恒常性維持において、どのような役割を果たしているかについて、サイトカインの産生や転写因子の活性化に着目した研究をおこなっています。

  1. 酸化ストレスによる生体応答制御
    ROSの産生亢進による酸化ストレスは、これまで生体機能を障害する有害なものとして考えられてきましたが、現在では様々な生体応答に有益な役割も担っていることが明らかになってきました。例えば、好中球などで産生されるROSは貪食したバクテリアの殺菌に重要な役割を果たしています。また、増殖因子などの刺激に伴い産生されるROSはMAPキナーゼなどを活性化することで細胞機能を調節していることも明らかになってきました。私達は酸化ストレス依存性に産生誘導される分子の一つとしてインターロイキン11(IL-11)と呼ばれるサイトカインを同定しました。そして、肝障害マウスモデルを用いた解析から、IL-11が酸化ストレス依存性に、死んだ、もしくは死につつある肝細胞から産生・放出され、周囲の生き残った細胞の増殖を促進することを明らかにしました(Nishina et al, Sci Signal 2012)。 さらに我々は、酸化ストレスと密接な関わりを持つ、分子内に電子の偏りを持つ親電性分子の中にもIL-11の産生を誘導するものがあり、IL-11が親電性分子の毒性に対して抵抗性を与えることを見出しています(Nishina et al, J. Biol. Chem. 2017)。興味深いことに、IL-11シグナルが欠損したマウスは雌で不妊となること以外に際立った表現型は示しませんが、疾患時にはIL-11の産生が亢進し重要な働きを担うことが示されてきています。我々はIL-11を介した生体制御機構を明らかにすることは、生体の恒常性維持機構や疾患を理解する上で重要であると考え、疾患モデルマウスを用いて(1) IL-11の産生機構、(2) IL-11の産生細胞ならびに(3) IL-11の下流で制御される機構を明らかにする目的で研究を進めています(図)。具体的には、生化学的手法、分子生物学的手法ならびに遺伝学的手法を用いて産生機構を明らかにするだけでなく、IL-11を産生する細胞を光らせるマウス(IL-11 GFPレポーターマウス)を用いて、組織学的な解析やイメージング技術により、IL-11の生体の恒常性維持やIL-11産生細胞の特に発がんへの関与を見出したいと思います。

  1. 転写因子による免疫応答の調節
    シグナルに応答した遺伝子発現は、必要に応じて分子を合成する合理的な仕組みであり、免疫応答においても重要な役割を果たしています。免疫応答における遺伝子発現プログラムの変化は、感染防御に不可欠である一方で、様々な病態の原因となるため、それを担う転写因子のはたらきは厳密に制御されなければなりません。私たちは、炎症反応に重要な転写因子であるNF-κBとその関連因子に着目し、転写調節の分子機序や、その破綻による疾患の発症メカニズムの解明を目指しています。これまでに、IκBςというNF-κB結合タンパク質を同定し、この分子が自然免疫系における遺伝子発現に重要であることを明らかにしてきました (Yamazaki et al J Biol Chem 2001, 2005, 2008; Yamamoto et al. Nature 2004; Kohda et al J Biol Chem 2016 など)。感染防御の最前線ではたらく自然免疫の系では、病原体に特有の成分を検出した細胞の中でNF-κBが活性化します。IκBςとNF-κBは制御回路を形成しており、IκBςの発現がNF-κBによって誘導される一方で、NF-κBが標的遺伝子を活性化するにはIκBςを必要とします(図)。この機構を介した遺伝子発現は、IκBςを蓄積させるような持続的で強いシグナルだけに応答して起こるため、不適切に発現すると害を及ぼすタイプの遺伝子の調節に有効だと考えられます。
    最近、マウスを用いた病態モデルの解析から、IκBςが多発性硬化症や乾癬などの免疫関連疾患の発症に関与することが示唆されてきています。これらの病態が生じるときには、自然免疫の場合とは異なる遺伝子群の発現が誘導されますが、IκBςがどのように病態に関わる標的遺伝子の転写を活性化するかについてはよくわかっていません。私たちは、IκBςによる転写調節の分子機構を明らかにし、さらに、IκBςやその関連因子の欠損マウスを用いた病態モデルの解析を通じて、遺伝子発現を介した新しい免疫制御機構の解明を目指します。

代表論文

  1. Nishina T, Deguchi Y, Miura R, Yamazaki S, Shinkai Y, Kojima Y, Okumura K, Kumagai Y, Nakano H. Critical contribution of nuclear factor erythroid 2-related factor 2 (NRF2) to an electrophile-induced interleukin-11 production. J Biol Chem 292,205-216(2017)
  2. Piao X, Yamazaki S, Komazawa-Sakon S, Miyake S, Nakabayashi O, Kurosawa T, Mikami T, Tanaka M, Van Rooijen N, Ohmuraya M, Oikawa A, Kojima Y, Kakuta S, Uchiyama Y, Tanaka M, Nakano H. Depletion of myeloid cells exacerbates hepatitis and induces an aberrant increase in histone H3 in mouse serum. Hepatology 65,237-252(2017)
  3. Kohda A, Yamazaki S, Sumimoto H. The nuclear protein IκBς forms a transcriptionally active complex with nuclear factor-κB (NF-κB) p50 and Lcn2 promoter via the N- and C-terminal ankyrin repeat motifs. J Biol Chem 291, 20739-20752 (2016)
  4. Yamazaki S, Akira S, Sumimoto H. Glucocorticoid augments lipopolysaccharide-induced activation of the IκBς-dependent genes encoding the anti-microbial glycoproteins lipolicain 2 and pentraxin 3. J Biochem 157, 399-410 (2015)
  5. Nishina T, Komazawa-Sakon S, Yanaka S, Piao X, Zheng DM, Piao JH, Kojima Y, Yamashina S, Sano E, Putoczki T, Doi T, Ueno T, Ezaki J, Ushio H, Ernst M, Tsumoto K, Okumura K, Nakano H. Interleukin-11 links oxidative stress and compensatory proliferation. Sci Signal 5, ra5(2012)
  6. Kojima Y, Nakayama M, Nishina T, Nakano H, Koyanagi M, Takeda K, Okumura K, Yagita H. (2011) Importin β1 protein-mediated nuclear localization of death receptor 5 (DR5) limits DR5/tumor necrosis factor (TNF)-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)-induced cell death of human tumor cells. J Biol Chem 286, 43383-93. (2011)
  7. Yamazaki S, Matsuo S, Muta T, Yamamoto M, Akira S, Takeshige K. Gene-specific requirement of a nuclear protein, IκB-ς, for promoter association of inflammatory transcription regulators. J Biol Chem 283, 32404-32411 (2008)
  8. Yamazaki S, Muta T, Matsuo S, Takeshige K. Stimulus-specific induction of a novel nuclear factor-κB regulator, IκB-ς, via Toll/Interleukin-1 receptor is mediated by mRNA stabilization. J Biol Chem 280, 1678-1687 (2005)
  9. Yamamoto M, Yamazaki S, Uematsu S, Sato S, Hemmi H, Hoshino K, Kaisho T, Kuwata H, Takeuchi O, Takeshige K, Saitoh T, Yamaoka S, Yamamoto N, Yamamoto S, Muta T, Takeda K, Akira S. Regulation of Toll/IL-1 receptor-mediated gene expression through the inducible nuclear protein IκBς. Nature 430, 218-222 (2004)
  10. Yamazaki S, Muta T, Takeshige K. A novel IκB protein, IκB-ς, induced by proinflammatory stimuli, negatively regulates nuclear factor-κB in the nuclei. J Biol Chem 276, 27657-27662 (2001)

教育の概要

学部

  • 代謝生化学Ⅱユニット(1年次Ⅲ期2コマ)人体の恒常性維持に重要なビタミンの種類と機能を理解し、ヘム・ポルフィリンの代謝機構を学びます。本ユニットは生化学講座生化学分野との分担により行われます。
  • 遺伝生化学Ⅱユニット(1年次Ⅲ期6コマ)代表的なシグナル伝達経路の活性化機構について学習し、受容体から転写因子の活性化までの仕組みを習得します。細胞周期や細胞分裂の基本概念を踏まえ、染色体転座や遺伝子変異によってがんなどの疾患が発症する機序を理解します。PCR法などの技術開発に基づくゲノム医学の進歩により可能になったことを習得します。生化学、遺伝学、分子生物学などの知識を有機的に統合し、疾患の基礎となる病態を理解するための基礎知識の体系化を目指します。
  • 生体物質の科学実習(生化学)(1年次Ⅲ期15コマ)代謝生化学で扱う内容のうち、糖代謝・脂質代謝・タンパク質の構造と機能の3項目について自ら実験を行い、講義で習得した知識を確実なものにします。実験結果に対する考察力を養い、研究能力の基盤となるリサーチマインドを涵養するとともに、試薬と実験器具を正しく扱う技術を習得します。実験結果に基づいて論理的なレポートを作成する技能と、わかりやすいプレゼンテーションを行う技能を習得します。本ユニットは生化学講座生化学分野との協力により行われます。

大学院

  • 修士課程:分子生体制御学特論(4コマ)
  • 博士課程:生体防御機構コース(共通選択)(1コマ)

その他

社会貢献

  1. これまでの実績
    生化学講座では2015年、2016年と2年連続で日本学術振興会の「研究成果の社会還元・普及事業 ひらめきときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜KAKENHI」に採択され、全国から公募した中学生及び高校生を対象とした実習と授業を行いました。各年度ともに100名近くの応募があり、その中から20名の学生に参加していただきました。本年度は8月23日に開催し、ケーブルテレビJ:COM大田の取材を受け、ケーブルテレビのニュースで内容が放映されました。
  2. 2017年度以降の予定
    2017年度は第26回日本Cell Death学会を主催することになっており、7月23日の午後に大田区との共催で「細胞死と病気」というテーマで区民公開講座を企画しています。
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151