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モンゴル植物由来の生理活性物質、モンゴル土壌細菌の生理活性物質の検索【薬学部 加藤文男】

モンゴル植物由来の生理活性物質、モンゴル土壌細菌の生理活性物質の検索【薬学部 加藤文男】

【フィールド】モンゴル国

JACI(現・社団法人 新化学技術推進協会)よりモンゴル国立大学に客員教授として派遣されていた方からの紹介で、モンゴル大学生物学部植物学教室ならびに微生物学教室と2006年より共同研究を開始しました。モンゴル国立大学は、モンゴルで最初の国立大学として1942年に首都ウランバートルに設立されたモンゴルで最大の国立総合大学です。
モンゴル国立大学 正面 ▲モンゴル国立大学 正面:右側が筆者、左側は前薬学部長の井手速雄先生。
モンゴル国立大学は海外の大学との交流を積極的に進めており、2009年の時点で日本の20大学との交流協定を結んでいるとのことです。東邦大学薬学部ともモンゴル国立大学生物学部との間で2007年9月に学部間の学術交流協定を結びました。
▲モンゴル国立大学生物学部学術交流協定調印式:モンゴル国立大学生物学部教員と井手前薬学部長(握手している右側の人物)
ウランバートルを一歩でると、「大草原」が広がり、様々な植物・動物を見ることができ、大自然の中での植物採集、土壌採集は楽しいイベントです。
モンゴルの大草原 ▲モンゴルの大草原
ウランバートル近郊のお花畑 ▲ウランバートル近郊のお花畑
採集した植物から抽出物の調製、土壌からの放線菌の分離などを行い、これらの材料を使って、植物学教室とはモンゴル原産植物の様々な部位から調製した抽出物中の生理活性物質の抗菌活性をもつ成分の探索、また微生物学教室とはモンゴル土壌より分離した放線菌(注1)の生理活性物質の探索を行っています。

東邦大学創立60周年を記念して設立された、海外の研究者との交流を支援する学術振興基金からの援助で、2006年には植物学教室より修士課程修了の学生が、翌年には学部卒の学生が微生物学教室でモンゴル原産植物の抽出物からの生理活性物質の分離精製を行いました。二人とも非常に優秀な学生で、現在は、それぞれ東京大学、東京医科歯科大学大学院の博士課程に進み研究を行っています。多くの学生が研究環境に恵まれた日本への留学を希望しています。
植物学教室バトフー教授と在学生 ▲植物学教室バトフー教授と在学生:バトフー教授(二列目右端)の左の女子学生と、前列左の女子学生が薬学部微生物学教室に1年間留学。
植物成分に関する共同研究では、本学生薬学教室の先生方に援助していただいた成果をモンゴル国内での学会のみならず、日本薬学会等でも報告しています。また、微生物学教室との共同研究では、モンゴルのアルカリ土壌より分離された放線菌から病院などの医療施設内での感染(院内感染)で問題となっているバンコマイシン耐性腸球菌や緑膿菌(注2)の病原性にかかわる遺伝子の発現を阻害する物質を生産する放線菌を分離しました。これらの成果を基に、今後とも共同研究を通してモンゴル国立大学との交流を深めていきたいと思っています。

注1)放線菌:主に土の中で生活する細菌のグループ。抗生物質、抗がん剤、免疫抑制剤などの様々な生理活性をもつ物質を生産する菌が多数含まれる。様々な放線菌の写真を以下のサイトで見ることが出来ます。
注2)バンコマイシン耐性腸球菌、緑膿菌:免疫力の低下した患者さんが感染して発症すると有効な薬剤が少ない、難治性の感染症原因菌。

プロフィール

加藤 文男(かとう・ふみお)

1949年静岡県生まれ。1974年千葉大学大学院薬学研究科修士課程修了。同年東邦大学薬学部微生物学教室助手。1986年薬学博士(千葉大学)。1987年薬学部微生物学教室助教授。1989年より1年5ケ月ウィスコンシン大学薬学部へ留学。1996年薬学部微生物学教室教授。興味の対象は学生時代から付き合っている放線菌です。2012年4月より東邦大学薬学部長に就任。

関連リンク