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微生物・感染症講座の耐性菌に関する国際的共同研究【医学部 石井良和】

微生物・感染症講座の耐性菌に関する国際的共同研究【医学部 石井良和】

【対象国】
中国、台湾、韓国、シンガポール、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ベルギー、オランダ、オーストリア、スウェーデン、デンマーク
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抗菌薬とは感染症の原因となる細菌を除去するための薬です。東邦大学医学部微生物・感染症学講座は、抗菌薬に抵抗する細菌、いわゆる耐性菌についての研究を柱の一つとしています。その中で私たちは、新しいタイプの耐性菌の研究をしています。新しい耐性菌は見つけだすことも難しいので、その方法を作り出すことから研究はスタートします。実際の感染症治療では選択すべき抗菌薬を知るための試験が実施されます。私たちが開発した方法は、その試験結果を解釈するときにも利用されています。

次にその細菌が、なぜ抗菌薬に抵抗するのかという理由、すなわち耐性機構を解明することも重要な研究のテーマです。私たちは、耐性菌だけが保有する遺伝子や、抗菌薬が分解される様子を詳しく調べて、耐性菌をより深く理解しようとしています。それらの結果や研究方法は新薬の開発や、感染症の新しい治療方法を開発するときに利用されています。

抗菌薬の効かない細菌は日本だけではなく、世界中で見つかっています。NDM-1あるいはKPCという耐性因子を保有する細菌や多剤耐性アシネトバクター属菌、多剤耐性緑膿菌、MRSAなどという名前を聞いたことがあると思います。このうちのいくつかの耐性菌は、外国から入ってきたことが分かっているのです。研究対象となる耐性菌は日本だけではなく、世界中に存在しています。私たちの研究成果や研究手法はユニークなものなので、国内の施設のみならず海外の研究者からも研究の一部を分担して欲しいという申し出が多数寄せられてきます。これまでに、中国、台湾、韓国、シンガポールなどの近隣諸国はもとより、欧米諸国の研究者たちとも共同研究を行っています。
▲ベルギーリエージュ大学のジャンマリー・フレール教授の退官記念国際シンポジウムにて、フレール教授と教授のお孫さんと。フレール教授は薬剤耐性に関与する酵素の世界的権威です。この国際シンポジウムには欧米諸国から100名を超える参加者がありました。
▲フレール教授の退官記念国際シンポジウムに集まったイタリア・スペインの共同研究者たちです。右端からスペインの研究者、筆者(石井先生)、残り4名がイタリアから参加しました。私を含め全員がフレール教授から酵素学の教えを受けました。
▲韓国のソウルにあるYonsei大学の研究者たち。右端からYonsei大学病院検査部のLee主任教授、続いてChong名誉教授、筆者(石井先生)、NDM-1を世界で初めて発見したYong先生、左端が多剤耐性アシネトバクターの研究者として有名なJeong先生です。Yonsei大学では酵素学についての講義と実習をしてきました。
▲私がシンガポールで開催された環太平洋感染症学会に出席した時の写真です。写真左側のKoh先生は100報を超える論文を執筆している高名な研究者です。Koh先生は私どもの教室に酵素学の勉強をするために来日されました。
▲オーストラリアのクイーンズランド大学のパターソン教授が微生物・感染症学講座で講義をしてくださっているところです。パターソン教授は200報を超える論文を執筆している、世界的に有名な感染症医です。パターソン教授とは多剤耐性アシネトバクター属菌の国際的な疫学調査などで共同研究をしています。
▲中国医科大学での講習会です。中国医科大学には公益財団法人笹川記念保健協力財団から援助を頂いて訪問しました。同講習会には中国全土からレジオネラ属菌に興味を持つ医師や検査技師の皆様が集まり、分離法と検出法を一緒に勉強しました。レジオネラ属菌は肺炎の原因菌として重要なのですが、その分離が難しく、中国からの報告がほとんどありません。

プロフィール

石井 良和(いしい・よしかず)

1958年生、長崎県出身。薬剤師、博士(医学)。日本大学理工学部薬学科卒業、長崎大学医学部付属病院薬剤部勤務を経て、薬剤耐性菌の解析をしたいと考え、長崎大学医学部付属病院検査部で臨床微生物学を学ぶ。その後、1992年6月から東邦大学医学部微生物学講座助教。1999年から2000年までベルギーのリエージュ大学理学部タンパク質工学センターに留学。2010年11月から東邦大学医学部微生物・感染症学講座講師。現在は、薬剤耐性菌に関する研究を国内外の共同研究者とともに行っている。